ゴー宣ネット道場

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切通理作
2013.1.7 02:30

「脱成長」だけを唱えてればいい?

 お正月といえるような日々も特に過ごさず、
仕事に費やしていた貧乏ライターの私ですが、
三が日の溜まった新聞を今朝、
ようやく拾い読みし始めました。

 

 景気と幸福を考えるにあたって、
正月の紙面というのは、
どんな視点を打ち出しているのか、
気になりました。

 

 朝日新聞の元旦の紙面を見ていると、
右肩上がりの経済成長はもう無理だという
「脱成長」のスローガンが目に入ってきました。

 

 そのこと自体は、わがゴー宣道場と
立場が同じに見えます。
 坂の上の雲をいつまでも目指さず、
坂の下の土地を耕していこう。

 大新聞と道場が今年は同じ方向に向かって
足を踏み出して行くのか・・・・・・。

「こりゃ幸先がいいわい」と私は明るい気分になり、
元旦の朝日の社説に目を落としました。


 年頭の社説というのは
今年の日本をどう考えていくかという
マニフェストであるはずです。

 

 「『日本を考える』を考える」?

 むむむ……なんだ、このタイトルは。

 「私たちが抱える、うんざりするような問題の数々は、『日本は』と国を主語にして考えて、答えが見つかるようなものなのか」


 なんと、国という枠組みで物ごとを考えること自体が、
混迷を深めているというのです。

 「日本」を主語にした問いは、
それ自体的外れだと書いてあります。

 

 その反対の立場として、
好意的に捉えられているのはギリシャの例。

欧州の財政危機において、
ギリシャが壊滅的危機を免れたのは、
主語を母国ではなく「欧州」としたからなのだ――。

 

 私はこれを読んで、
かつて身近な友人とTPP論議をした時に、
グローバル化の中で、
アジアの国同士の連携は避けられないのではないかと
彼が言っていたのを思い出しました。

 
 

 おそらく、TPPに関して拒否の姿勢とまでいかない
多くの人の認識のベースに、
このようなものがあるのではないでしょうか。

 

 元旦の朝日の社説に「TPP」のことは
一言も触れられていませんが、
問題をどこに誘導しようとしているのかは
明らかに思えます。

 

 しかし、この社説とは裏腹に、
同じ朝日新聞の国際面では、
欧州の人々が共通通貨ユーロを手にした十年前、
ギリシャで観光の活性化にとオープンした植物園が閉鎖され、
地元の人々が野菜を無料で分ける地産地消の拠点としている
という記事があります。

他にも、自給自足と、
モノを増やさないで物々交換する人々の姿が紹介されています。

 


 記者の視点として、
ギリシャの脱成長の試みは日本にも示唆を与える、
と書かれています。

 

 そして文化面では、日本の話として、
ルームシェアをする若者たちの
ありようが紹介されています。

「モヤシ分け合い家具はタダで」
と見出しにあります。

 行き詰まり、逃げ場がないように見える
社会を打ち破る芽としての可能性が
ここに見出されています。

 


 今年の年頭を飾る、
同じ新聞のこれらの記事を併せ読むとき、
どのような視点が生みだされるのでしょうか。

 

 率直な印象を言えば、
ここには「真ん中」がないということです。


 むき出しのグローバリズムと、
顔の見える距離で必要なものを分け合う関係。

 

 国家という屋根を外した野ざらしの状態で、
人々があっけらかんとその日暮らしをしているような
イメージがあります。


 なんだか涅槃の世界のように見えるのは
私だけでしょうか。

 

 一見心地よさげな「脱成長」ですが、
なんだかもう絶望を通り越した自由・・・・・
という境地にまで達しないと、
将来のビジョンは築けないのかと、
絶望的な気持ちになってきます。

 

 そうなる前に、
出来る事ってないんでしょうか。

 

 13日(日)のゴー宣道場「景気と幸福を考える」では、
そのことを、皆さんと考えていきたいと思います。

 

 午後1時から、
ニコニコ生放送で第一部が生中継される予定です。

切通理作

昭和39年、東京都生まれ。和光大学卒業。文化批評、エッセイを主に手がける。
『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞。著書に『サンタ服を着た女の子ーときめきクリスマス論』(白水社)、『失恋論』(角川学芸出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新著)、『ポップカルチャー 若者の世紀』(廣済堂出版)、『特撮黙示録』(太田出版)、『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)、『地球はウルトラマンの星』(ソニー・マガジンズ)、『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』(宝島社)、『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)など。

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