ゴー宣ネット道場

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高森明勅
2013.6.18 16:40

不敬極まる八木秀次氏「秋篠宮摂政」論

先日のブログで、宮内庁絡みの情報操作に警戒を要すると
書いたばかりだが、先週の『週刊新潮』の事実無根記事に続いて、
今週は『週刊ポスト』だ。

しかも先の記事と、論調が一本の線で繋がっているように見える点が、ますます不審だ。

記事のタイトルは
「宮内庁内でも議論噴出!『秋篠宮を摂政に』は是か非か」。

中身のポイントは
「宮内庁内部や一部の宮家関係者などの間で、
将来、(皇太子・同妃)両殿下が天皇皇后になられた際、
雅子妃の公務負担を軽減するため、
秋篠宮殿下に摂政に就任していただくべきだとする意見が出ている」
というもの。

開いた口が塞がらないとはこのことだ。

天皇という地位の重みがまるで分かっていない、
と言う他ない。

将来の皇后たるべきお方の体調が今のところ
必ずしも十分ではないからと言って、
天皇陛下がご健在でいらっしゃる今から、
次代の摂政の設置をあげつらうとは、
不敬、不届き、不見識にもほどがある。

そもそも将来、万一、時の皇后のご体調が万全でなくても、
その事で摂政が必要になる訳では全くない。

皇室会議で摂政の設置が検討されるのは、
天皇陛下が未成年か、そうでなければ、
憲法に定める国事行為をご自身では行えない
心身の状態が長く続くことが確実であるような場合に限る。

摂政は、天皇の行うべき国事行為以下のご公務をほぼ全て、
天皇に代わって行う立場だから当然だ。

皇后たる方のご負担軽減など勿論、爪の先ほども関わりない。

この記事で主張されている摂政設置論は、
明け透けに言って、皇后のご療養のためにご健康な天皇が、
事実上その地位を降りる必要がある、と主張しているに等しい。

天皇より皇后を重視した議論としか思えない。

本末転倒も甚だしい。

こんな愚にもつない意見が、
本当に「宮内庁内部や一部の宮家関係者」(また匿名!)
から出ているのか。

俄に信じがたい。

ところが、この正気を疑うような意見に対し、
保守系知識人と見られている人物が
「いま考えられる最も現実的な選択肢だ」
ともろ手を挙げて賛成しているのだから、呆れ果てる。

発言の主は、八木秀次氏だ。

彼はこんなことを言っている。

「雅子妃が療養を続けたまま皇太子殿下が天皇に即位された時、
ご夫妻が十分に天皇皇后としてお務めができるだろうか、
という懸念が国民からでてくるのは当然です。
そのとき、秋篠宮殿下が摂政としてサポートできれば、
状況はずいぶん改善されるのではないか」と。

発言中、雅子妃殿下だけ、「殿下」という敬称がないのは
どうしたことか。

編集部のミスだろうか。

更に、雅子妃殿下のご快癒を願う素振りもないのは、
皇室を敬愛する国民の態度としては、首を傾げる。

それはともかく、「皇室に詳しい」という八木氏は、
失礼ながら摂政の役割が分かっているのだろうか。

「摂政としてサポートできれば」などと言うが無論、
摂政は天皇をサポートする立場ではない。

繰り返すまでもなく、天皇に成り代わって、
天皇の役割をほぼ100%代行するのが摂政の任務だ。

大正天皇のご病気が重篤になられて、
皇太子だった裕仁親王(後の昭和天皇)が
摂政に立たれた時の状況を想起すればよい。

「状況はずいぶん改善される」といったレベルの話では全くないのだ。

八木氏は海外にお出ましになる時も、
秋篠宮・同妃両殿下が

「摂政宮とその妃という立場ならば重みが生まれ」るとも言う。

摂政というのは、その程度のことのために立てるものではない。

重みが必要なら「ご名代」として赴かれればよいだけのことだ。

ご健康な天皇陛下がいらっしゃるのに摂政が立てば、
海外からはクーデターまがいの出来事でもあったのかと、
疑念を持たれてもやむを得まい。

ご健康な成年天皇がいらっしゃるのに、いかなる理由であれ、
摂政をお立てする前例が一度でも開かれてしまうと、
取り返しのつかないことになる。

以後、何か適当な理由をでっち上げて、
恣意的に摂政を設置しようとする動きが出ても、
最早それを押し止めるのは不可能になろう。

それは殆ど天皇の廃立に等しいから、
国民統合の中心として不動であるべき皇位は、
極めて不安定にならざるを得ない。

同じ記事の中で、大原康男氏が
「そもそも天皇に心身の故障がないのに、
摂政を置くのは制度の目的に反します」と
指摘されているのが、正しい。

そうした事態は、断じて避けるべきだ。

先週の『週刊新潮』も今週の『週刊ポスト』も、
皇室典範の趣旨を踏みにじり、
日本の社会秩序の基軸を危機に晒すことになっても、
次代の天皇になられる皇太子殿下のご在位を短期に終わらせるか、
形骸化させるという、皇位の尊厳に挑む、
まさに万死に値する「謀反」というべき意図において、共通する。

しかも、宮内庁の内部かその周辺に、
八木氏と考えを同じくする人物がいて、
良からぬ画策をしている可能性が浮かび上がった。

彼(又は彼ら)がこれからも妙な動きを続ければ、
近くそれが誰かを特定出来るだろう。
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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