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高森明勅
2014.8.18 13:10

百地章氏「女性宮家」否定論の不思議

産経新聞(8月16日付)に保守系を代表する憲法学者で
日本大学教授の百地章氏の一文が載
っている。

ポイントは2点。

(1)女性宮家の問題点の指摘。
2)女性皇族がご結婚による皇籍離脱後も
皇室のご公務を支えられる方
策を検討することの提案。

(2)は、政府が検討しようとしている「皇室輔佐」「皇室特使」
と重なり、
それがいかに無理で無茶な話か、
すでに繰り返し指摘して来た。

そこで、ここでは(1)について簡単に触れるにとどめる。

氏の立論中、問題点として注目しておくべきは2点。

〈1〉女性宮家の創設は、女系天皇の誕生につながりかねない。
〈2〉
結婚を介して民間人男性が突然皇室に入り込んでくることへの
不安

恐らく、これらが女性宮家否定論の“切り札”なのだろう。

だが率直に言って、これらが何故、問題点になるのか。

不思議だ。

 まず〈1〉。

これについては、百地氏ご自身、かねて
万一の場合には、皇統を守るために、女帝さらには女系の選択
ということもあり得る」
(『憲法の常識 
常識の憲法』文春新書、94頁)と明言しておられる。

にも拘らず、
「女系天皇の誕生につながりかねない」ことが何故、
致命的な問題点になり得るのか。

不思議だ。

次に〈2〉。

正式なご結婚を「介して」いる以上、「突然」「入り込んでくる」
との表現は、穏当を欠く。

民間でも、正式な結婚で嫁や婿を迎える場合、
普通「突然」「
入り込んでくる」とは、言わない。

皇室の場合、皇族の身分に留まる方が結婚される際は、
まず天皇陛下のお許しを頂き、更に首相を議長とし、
皇族や三権の長などで構成される皇室会議の議を経る、
という手順を踏むことになる。

これでも「突然」「入り込んでくる」ことになるのか。

これまで何方もの民間人女性が、皇室に嫁いで来られた。

これらの妃殿下方も、皆様「突然」「入り込んで」
来たことになるのか。

それとも、民間人「女性」は大丈夫でも、
何故か「男性」だけ「突然」「入り込んでくる」ことになり、
不安」なのか。

しかし、氏は「蘇我氏や藤原氏の例を考えれば…危険性は大きい」
と述べておられる。

蘇我氏も藤原氏も、一族の「女性」を皇室に嫁がせて、
外戚としての権勢を振るった、
とされる。

ならば、今の皇后陛下をはじめ、
民間出身の妃殿下方を迎えたことは、全て「不安」で「危険」
なことだったのか。

勿論、そうではない。

改めて言う迄もないが、蘇我氏や藤原氏が権勢を振るった頃とは、
時代が全く違うからだ。

天皇の統治上の権威が再確立した明治以来、
既に150年近い歳月を閲した。

だが、第2の蘇我氏も藤原氏も一切、登場していない。

何故か。

立憲君主制が健全に機能しているからだ。

現在の「国民統合の象徴」としての天皇は一層、
政治権力から距離を置く。

なのに、皇室に留まる女性皇族のご結婚の場合だけ、
お相手は「
突然」「入り込んでくる」「不安」で「危険」
存在と見なされるのだろうか。

不思議だ。

この度の百地氏の一文は、女性宮家を否定しようとしても、
結局、
この程度の材料しかないということを示してくれた。

それは、執筆者の意図とは別に、女性宮家創設の妥当性を、
裏側から証明して見せたものだったとも言えよう。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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