ゴー宣ネット道場

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高森明勅
2014.8.24 01:53

男系「新宮家」創設案の問題点(下)

(3)提案の妥当性にも疑問符がつく。

旧宮家系の血筋を「もう1つの皇統」(八木秀次氏)などと
表現する向きがある。

だが、皇籍を離れた以上、当然、「皇統」ではあり得ない。

離脱の政治的な事情がどうであれ、
平氏や源氏がそれぞれ天皇出自であっても、
その血筋を皇統と見なすことが出来ないのと同様だ。

まさに里見岸雄博士が夙に指摘された通り。

「『祖宗の皇統』とは、単に家系的血統を意味するだけでなく、
皇族範囲内にある』といふ名分上の意味を包含してゐるのである。

然らざれば、我国の如き皇胤国家に於ては、
君臣の分を定めることが不可能に陥るであらう」
(『
天皇法の研究』)。

だからこそ、明治の皇室典範増補や現在の典範では、
一旦皇籍を離脱した場合、
その復籍を一切、認めないのだ。

であれば、正式なご結婚を介することもなく、
“民間人男性”が「
突然皇室に入り込んでくること」に対し、
「不安」どころか、
深刻な危機感を覚えて当然だ。

この点については、葦津珍彦氏の発言に耳を傾けるべきだ。

氏いわく、
その事情の如何に拘らず、一たび皇族の地位を去られし限り、
これが皇族への復籍を認めないのは、わが皇室の古くからの法である。
この法に異例がないではないが、賜姓の後に皇族に復せられた事例
は極めて少ない…。

この不文の法は君臣の分義を厳かに守るために、
極めて重要な意義を有するものであつて、
元皇族の復籍と云ふことは決して望むべきではない」
(『天皇・
神道・憲法』)と。

葦津氏は、かつて皇族だった方々でさえ、
君臣の分義を厳かに守るために」その復籍を考えるべきではない、
とおっしゃった。

まして旧宮家系の未成年の男子の場合は、
元皇族」の更に孫や曾孫の世代。

その皇籍取得など、尚更あり得ない話ではないか。

勿論、天皇から20世以上離れ、
父親や祖父の世代から既に国民として生まれた人物が、
新しく皇族の身分を得て、そのまま皇室に残ったなんて例は、
かつて一度もない。

皇室という「聖域」に生まれ、
天皇陛下とごく近い血縁にある方に対し、
ただ“女性だから”
というだけの理由で、
ご結婚と共に皇族の身分から離れて戴きながら、
ご公務だけは引き続きしっかりご負担願う一方、長年、
世俗で暮らして来た家庭に生まれ、
既に2代、
3代に亘る国民である“未成年”の民間人男性を、
正式なご結婚も介さないで「突然」皇族にしようというプランが、
皇室の尊厳を守り、国民との区別を厳重に保つ上で妥当なのか、
どうか。

答えは、余りにも明らかだろう。

文中には、世論調査の一例も援用されている。

皇室の活動を維持するため旧皇族の男系男子が
皇族になることに賛成
の国民が48%と、反対を上回っています」と。

その調査の規模や、
回答者がどれだけ詳しい知識を持っていたのか、
私は知らない。

無論、そうした方面への配慮も必要であろう。

だが、“君臣の分義”について、
「民意」
によって容易く左右すべきでないのは、
改めて言う迄もあるまい。

むしろ、紹介されている調査結果は、
既に皇室と国民の区別が見失われようとしている、
危うい傾向を示唆しているのかも知れない。

もしそうであるなら、男系の民間人男性を「突然」皇族にしてしまう
プランは、一層、
危険視すべきではないか。

そもそも、明治以降に限定しても、「旧皇族」は
占領下に皇籍離脱した方々に限らない。

その「男系子孫」となると、範囲は更に広がる。

国民の中から皇籍を取得し得る人物が、
次々に現れることになりかねない。

そうなると、皇室と国民の区別は、どんどん曖昧になって行く。

初めはそこまで広げるつもりはなくても、
一度、歯止めを外すと、
後戻りするのはほとんど不可能。

しかも、側室不在で男系限定を維持しようとすれば、
やがて継嗣を確保出来なくなるから、
必然的に皇籍取得の対象範囲を次第に広げざるを得なくなる。

かくて「君臣の分義」は有名無実となり、
皇室への自然な敬愛も崩れ去るだろう。

既に3方の内親王がおられるにも拘わらず、皇室にお残り戴かず、
そんな最悪の未来を日本人は望むのか。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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