ゴー宣ネット道場

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高森明勅
2014.9.8 14:47

朝日新聞の思い出(3)

その2。

平成4年のこと。

当時、西側(自由主義)陣営は、
中国の天安門事件の暴虐に抗議して、経済制裁を続け、
閣僚クラスの相互訪問も停止していた。

そんな中、日本の宮澤喜一政権は、国内世論の反対も押し切って、
あろうことか、天皇陛下の中国ご訪問を敢えて実現させる。

まさに、暴挙以外の何ものでもなかった。

陛下のご訪中を実務面で推進したのは、加藤紘一官房長官。

この時の政府のデタラメさ、国民の反対の動き、
そして何より、
陛下のご態度の終始変わらぬ水際立った格調の高さ―
などは、
ご訪中問題懇話会編『〔検証と総括〕天皇陛下ご訪中問題』
展転社)に詳しい。

当時、私はご訪中に反対の立場で、
微力ながら民間の様々な動きにも関わっていた。

そうした流れの中で、
その頃、
巨大な影響力を持っていた朝日新聞を
「利用」
することを思い立ち、ここでは詳細は省略するが、
結果として利用したり、されたりということが、あった。

大詰めの段階で、政府側から「民間側の意見を聴きたい」
との
要請があり、私も含め代表3名が、
加藤官房長官と石原信雄副長官に会った時のやり取りの中身を、
政府にプレッシャーをかける為に、朝日にリークしたりとか。

で、ことが終わった後、朝日サイドから
「一杯やりながら、
気楽に色々話を聞かせてくれませんか」
と誘われた。

この時、私を誘ったのが、当時の政治部長、若宮啓文氏だった。
後に主筆にまで上り詰め、
退職した今も“ミスター朝日”
的な扱いを受けている人物。

場所は、四谷の少し落ち着いた焼き鳥屋。

もう1人、首相官邸詰めキャップも同席した。

あれこれ楽しく懇談するうちに、
私がスルッと
「朝日も“
天皇元首化反対”なんて論説を掲げるのは、
もう止した方がいいですね。みっともないから」と言うと、
俄然、
論争的に。

「ほぅ、何故ですか?」
「だって、天皇陛下は既に“元首”なんだから。
今更、改めて元首“化”って、
賛成でも反対でも、変でしょ」
「天皇が既に元首だとおっしゃる?
 その根拠は?」
「じゃあ説明しますよ…」てな具合。

しばらく問答が続いた後、
私が最後に
「…ということなので、
やっぱり天皇陛下は既に元首でしょ?
そう考える以外にないでしょ?」と問い詰めると、
彼はこう答えた。

「まぁ、私個人としては、それでも異存はありませんが、
しかし、
やっぱり社論としてはそのまま認める訳にはいきません」と。

社論なんて、要は浮き世の義理みたいなものでしょ。
そんなものより、若宮さんが理解してくれて良かった。
じゃあ一件落着したので、話題を変えて楽しく飲みましょう!」

その後、社論を決定すべき主筆になった彼が、
古色蒼然たる「
天皇元首化反対」の看板を下ろしたのか、どうか。

年賀状のやり取りは近年まで続けていたが、
残念ながらそのことは確認はしていない。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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