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切通理作
2014.10.6 23:19

朝日新聞へのテロを煽る危険性


我が家に朝日新聞からの封筒が直に(郵便配達を通してではなく)投函されていました。宛先は書いてありません。我が家は朝日新聞をとっていますから、地域の販売所を通して、そこが取り扱う購読者全員に出されたものでしょう。

「このたび朝日新聞の報道と対応により、みなさまの信頼を損ねてしまいました」「深くお詫び申し上げます」

 

吉田調書や慰安婦問題といった具体的な実例は挙げられていませんから、これを投函された人の中には、「なにがなんだかわからんが、朝日新聞の信用が落ちているらしい」という印象を持つ人も居るでしょう。

 

相前後して、私の実家に朝日新聞社の人間を名乗る人物から電話がありました。「03」から始まる、23区内の電話番号の人間に片っ端から電話をかけているとのことでした。

直接受けたのは私の母ですが、やはり具体的な実例は挙げることなく、信頼を損ねて申し訳ありませんという主旨だったそうです。

 

朝日新聞が、こういうことを自らやっているというのは、どんな意味があるんでしょうか。

のべつまくなしに謝っている感じがしますし、かといって具体的な話題を自分からは出さないようにしている。

 

朝日自らが、朝日をバッシングする世間の風潮に積極的に乗っているようにも感じられます。

 

「川に落ちた犬は叩き続けなければならない」

週刊文春の朝日バッシング特集で、金美齢氏が出したコメントです。

 

集団リンチを肯定し扇動するかのごときおそるべきコメントが象徴する現実に対して、ひたすらわけもなく謝るという、かえってそれを補強するような態度の朝日新聞。

 

同じ文春の特集で、半藤一利氏もコメントを寄せています。かつて中央公論社が、自社の雑誌で天皇テロ小説を載せたことが問題となり、逆に右翼からテロを受けた例を出し、このように言っています。

 

「中央公論は当初、謝罪を躊躇しました。しかし、やがて宮内庁も法務省に法的検討を依頼するなど収拾がつかなくなり、謝罪文を掲載した。しかし、今回の朝日同様、誰に何を謝っているのかが曖昧でした。右翼の怒りは収まらず、社長宅を右翼少年が襲撃し、家政婦が殺される事件にまで発展してしまった。事件後、中央公論は右翼に全面謝罪しました」

 

中央公論へのテロ事件は、僕の子ども時代の話で、歴史的事実としては知っていましたが、この半藤氏の記述にはビックリしました。

 

なんと当時の中央公論は、テロを受けて自らの身内から死者が出ているのに、その事件の後で、右翼団体に「全面謝罪」したというのです。

 

殺されてでも謝り続ける……こんな、いくらなんでもドMすぎる異常な態度も、おそらく当時の状況の中では、こうするより他にないと感じられたのではないでしょうか。

 

そう。「川に落ちた犬は叩き続けなければならない」となってしまっている社会においては。

 

いまからでも、この風潮に乗っかって、朝日新聞にテロを仕掛ける輩が出てこないとも限りません。

 

もしそうなったら、それを後押ししたのは、いったい誰ということになるのでしょうか?

切通理作

昭和39年、東京都生まれ。和光大学卒業。文化批評、エッセイを主に手がける。
『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞。著書に『サンタ服を着た女の子ーときめきクリスマス論』(白水社)、『失恋論』(角川学芸出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新著)、『ポップカルチャー 若者の世紀』(廣済堂出版)、『特撮黙示録』(太田出版)、『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)、『地球はウルトラマンの星』(ソニー・マガジンズ)、『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』(宝島社)、『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)など。

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