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高森明勅
2025.6.28 22:06皇室・皇統問題

「女性の活躍が大切」という天皇陛下のお考えに背く者たち

改め言うまでもないが、皇位継承問題の解決については、
皇室ご自身のお考えを最も尊重すべきだ。
皇室のお考えとは、突き詰めると天皇陛下
ご自身のお考えに他ならない。

しかし今の憲法において、皇室典範の改正はもっぱら
「国会の議決」によるとされている(第2条)。
その一方で、天皇は「国政に関する権能を有しない」とされる(第4条)。

その為に、当事者でいらっしゃる天皇陛下をはじめ
皇室の方々が、皇室典範の改正、皇位継承問題について、
直接ご自身のお考えを公然と表明することができないという、
甚だ不合理な現実がある。

勿論、天皇陛下が皇位継承問題の解決について、
ご自身のお考えを持っておられないなどとは全く想像できない。
明確なお考えを持っておられることは疑う余地がない。
従って、真に皇室を敬愛する国民であれば、
憲法による制約の中での窮屈なご言動の端々から
滲み出る天皇陛下のご真意について、
虚心に謙虚に拝察する心構えが大切だ。

以下に、陛下のご真意を拝察する上で
決して見逃してはならない最近の報道を、いくつか紹介しておく。

先ず西村泰彦·宮内庁長官の発言について、
毎日新聞が以下の報道を行っている(6月12日配信)。

「安定的な皇位継承に向けた皇族数確保策の与野党協議について、
今国会での意見集約が見送られる見通しを受け、
宮内庁の西村泰彦長官は12日、定例記者会見で
『宮内庁としてはコメントすべき立場にないが、
皇族方の減少は大きな課題であり、それを踏まえた
議論はしっかりと進めていただきたい』と述べた」

このようなテーマについて、宮内庁長官が独断で
発言することはあり得ない。
しかも「コメントすべき立場にないが」と断りながら、
敢えて「議論はしっかりと進め」るように注文を
つけている辺り、天皇陛下ご自身のお考えの
かなりストレートな表明と受け取るべきだ。

「立法府の総意」を取りまとめるプロセスで、
女性皇族がご結婚後も皇族の身分を保持されることで、
一旦はギリギリ合意が成立したにも拘らず、
立法府(国会)とは立場が異なる政府サイドの
人間である山崎重孝·内閣官房参与が、
何ら民主的な正当性を持たない形で介入し、
結果的に自民党の麻生太郎·最高顧問が
「ちゃぶ台返し」をして、これまでの積み重ねを
全て水の泡にしてしまった。

そのことに対する 、天皇陛下の強いご不満と
危機感が表明された、と拝察できる。
具体的には、麻生·山崎両氏に対する厳しい
ご叱責と受け取るべきだろう。
叱りつけられた本人たちは、そのことに気づいているのか、どうか。

又、天皇陛下はこのところ、お住まいの御所において、
大阪·関西万博への参加の為に来日する各国の元首と、
相次いでお会いになっている。

例えば5月27日、アイスランドのトーマスドッティル大統領と
お会いになった。
その時のやり取りが次のように報じられている(日本経済新聞5月27日配信)。

「アイスランドは世界で最も男女平等が進んでいるとされ、
宮内庁によると陛下は『どうして平等が実現されているのですか』
と尋ねられた。
大統領は『長年積み重ねてきた努力の成果』などと答えると、
陛下はうなずきながら聞かれていたという」

6月11日にフィンランドのストゥブ大統領とお会いになった時にも、
次のようにお尋ねになったという(FNNプライムオンライン6月11日配信)。

「フィンランドにおいては男女平等の分野で
世界をリードされていますが、どういう工夫をされていますか」
更に同13日にコソボのオスマニサドリウ大統領と会見された時にも、
次のように尋ねられたという(FNNプライムオンライン6月13日配信)。

「国造りのためには女性の活躍が大切だと思いますが、
大統領はどうお考えですか」
天皇陛下とお会いしたこれらの元首たちが、
先頃、日本政府が女性差別撤廃条約に基づく
国連女性差別撤廃委員会からの勧告に反発して、
同委員会を拠出金の使途から除外するなどの
“報復措置”をとった事実を知らないはずはない。
そのような政府の頑なな姿勢と、陛下ご自身のお考えとの
ギャップがあまりにも激しいので、誰もが驚いたのではないか。

しかも天皇陛下のこれらのご発言は丁度、
上記の女性皇族のご結婚後の身分保持への合意が、
自民党によって大きく裏切られた時期と重なる。

額賀福志郎·衆院議長らの仲介で自民党と立憲民主党が
一旦は合意に達し(5月27日)、それを前提に衆院法制局が
「取りまとめ」案を作成したものの、
それが官邸官僚(山崎氏)の越権介入によって反故にされ
(5月30日)、そのことを事後に知らされた
立憲民主党の野田佳彦·代表が記者会見の場で、
自民党の背信的な「ちゃぶ台返し」を非難した(6月6日)
という流れだ。

この経過と突き合わせると、特に自民党のちゃぶ台返し後に、
「男女平等」「女性の活躍」というご発言を
繰り返された事実は看過できない。

これらのご発言が宮内庁からわざわざ公表されたこと自体にも、
明確なメッセージ性を読み取る必要がある。

▼追記
今月2本目のプレジデントオンライン
「高森明勅の皇室ウォッチ」は6月29日に公開。

 

▼高森明勅公式サイト
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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