クリストファー・ノーランの『ダンケルク』は9月9日
から封切りらしいが、わしはIMAXで見られるという
誘惑に負けて、試写で見てしまった。
ノーラン監督は『ダークナイト』3部作でファンになったが、
『ダンケルク』でも、あの『ダークナイト』のように、
張り詰めたままの緊迫感が流麗に続いていくストーリー展開を、
不穏な音響・音楽が下支えするテクニックが使用されていて、
一瞬もたるむことがなかった。
「ダンケルクの撤退戦」というと、日本人はあまり知らない
だろうが、ドイツ軍によって、フランスのダンケルクの海岸に
追い詰められた英仏軍40万人が奇跡のような撤退を果たすと
いう史実なのである。
遠浅の海岸で、大型船が救出に来れない中、陸海空からドイツ
軍が攻めてくるから、英仏軍は恐るべき大敗北を喫して、
第二次世界大戦の行方は変わっていたかもしれない。
ここでの撤退が成功して、兵力を温存したからこそ、のちの
ノルマンディー上陸作戦に繋がったのだ。
「ダンケルクの撤退戦」は、それほど重要な史実だったが、
この映画の一つの視点である一民間船が、実は勝敗を喫する
重大な役目を追うことになる。
こんな父子を乗せた民間船がダンケルクに向かって行って、
何ができるんだと思わせておいて、クライマックスである。
わしは、まさにルソーの社会契約論を思い出して鳥肌が立った。
これ以上はネタバレになるが、他の映画評論家は社会契約論
なんて言わないだろうから、感動のポイントがわしとは違う
かもしれない。
やっぱり戦争映画はハリウッドに敵わない。
日本の戦争映画だと、お涙頂戴の浪花節になってしまって、
スマートさがゼロだ。芸術にならないのである。
『ダンケルク』はクールだ。もう一度、映画館で気楽に集中
して映像の隅々を見てみよう。




















