MLで、ある門弟の方が聞いたという、経済学者による、
「マスコミでは貧困というかわいそうな話は注目が集まるので、
といった言い分が紹介されており、首を傾げました。
また、この主張の補足として、あるブログも紹介されていたけれども、
http://blog.livedoor.jp/nnnhhhkkk/archives/65876030.html
読んでみると、頭のなかが曽野綾子みたいな人が書いた内容でした。
このブログの執筆者いわく、
“日本のマスコミは国内の「相対的貧困率」を持ち出して、格差社会を
問題だと言って扇動するが、現実には収入格差は縮まっている。
マスコミが絶対に取り上げない「絶対的貧困率」の国際比較を見よ。
日本は世界でも貧困率の低い国であり、このグラフを見れば、日本の
貧困など大した問題ではないということがわかる”
◎絶対的貧困率
必要最低限の生活水準を維持するための食糧・生活必需品を購入できる
所得・消費水準に達していない絶対貧困者が、その国や地域の全人口に
占める割合。
◎相対的貧困率
世帯収入から税金・社会保険料を引き、世帯1人あたりが自由に使えるお金
を出し、それを低い方から並べた時に、ちょうど真ん中にあたる人を基準とし、
所得がその半分に満たない人の割合。
あのねー・・・。
地球の絶対貧困者と比較してどーすんの!?
国家間の経済や文明の水準はまったく異なっており、なにもかも一緒くたに
して貧困問題を語ることはできません。
アフリカのように、栄養失調の子供ばかりの大貧困層で構成されている
最貧国・失敗国家の分布を知るには、
日本のような先進国で、どう考えてもアフリカよりも明らかにインフラが
整っており、働けない弱者でも、生活保護でなんとかしのげる福祉制度
まである国家の中での貧困の実態は、相対的貧困率を見なければ、
意味がないでしょう。
この絶対的貧困者のグラフ、『データブック国際労働比較』は、毎年発表されて、
ネット上でも全ページ閲覧可能になっているのだけど、
よくよく見ると、もとは、Pew Global Attitudes Project という、
ワシントンに本部を置き、オルブライト元米国務長官が議長をつとめる機関が
発表した資料のなかから引っ張ってきたらしい。
で、この機関のホームページに、もともとの資料がPDFで公開されていたので
見てみる。
世界の経済格差や各国国民の幸福度、貧困率、グローバリズム受け入れ度
などを調査したものなんだけど、
その調査規模が、「世界44か国に渡る、38,000人から調査」。
サンプルが全世界でたった38,000人ですよ。
そのなかに、日本在住の日本人で、日本の本当の実情を回答した人は
何人いたわけですか?
この Pew Global Attitudes Project による絶対貧困率の調査は、
あくまでも、地球上の絶対貧困者の分布を図る目的で行われたものであり、
資料では、アフリカや中南米諸国の貧困を大きな問題として捉える記事が
添えられていました。
↓↓元記事のグラフ。縦長だったので、見やすいように泉美が整形したもの。
一方で、日本にでは、厚生労働省と総務省による「相対的貧困率」の調査が
公表されており、ホームページで全データを閲覧できるようになっています。
調査した「全国消費実態調査」と、36,000世帯からの「国民生活基礎調査」
を比較したもので、日本国内の貧困状況、経済格差を知るという目的ならば、
Pew Global Attitudes Project のグラフによる、地球の絶対的貧困数からは、
決してわからない実態が明らかになっています。
相対的貧困率は、世帯収入から税金・社会保険料を引き、世帯1人あたりが
自由に使えるお金を出し、それを低い方から並べた時に、ちょうど真ん中に
あたる人を基準とし、所得がその半分に満たない人の割合。
要するに、一般的な家庭の所得の半分に満たない金額で生活する人の割合
です。
日本では、単身世帯で年間122万円がこのラインになります。
2人世帯では173万円、3人世帯で211万円。
この実態に即した調査で、貧困ラインを下回る状態として現れたのが、
日本全体で16.1%、子供のいる世帯では16.3%、
つまり、6人に1人の子供が貧困状態にある、という結果なのです。
国内の貧困問題を語るときに、国際比較のグラフを持ってくる奴なんて、
ちゃんちゃらおかしいと思わなければいけません。
地球規模の絶対的貧困率と、日本国内の相対的貧困率、
データの悪用に騙されてはいけません。