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高森明勅
2019.7.20 06:00政治・経済

共産党の「屈服」

日本共産党が大きな方針転換をしている。
結党以来、掲げ続けて来た「君主制の廃止」という政治目標を取り下げた。
「天皇制」という用語を使うのも止めた。
これは極めて大きな転換だ。

平成16年の党綱領改定による(同綱領については不破哲三氏『党綱領の力点』
平成16年、同『党綱領の理論上の突破点について』同17年など参照)。
この転換は何故か? 彼らの言い分では、今の憲法下の天皇の在り方は、
もはや「君主制」ではない。
だから、「君主制の廃止」という課題自体が無用になった、と。

「天皇制」という言葉も当てはまらなくなったので、
「天皇の制度」と言い換えた(志位和夫氏『天皇の制度の日本共産党の立場』
令和元年ほか)。
しかし、何とも間抜けな話ではないか。
憲法が施行されて60年ほど経って、気が付いたら、
いつの間にか「君主制」はとっくに「廃止」されていました、って。
そんな話を誰が真に受けるだろうか。
そもそも、世界中の国々が「元首」と認め、
国内でも三権より“上位”におられ(内閣総理大臣と最高裁長官を任命し、
国会を召集)、その地位を「世襲」される天皇を、君主でないと言い張るのは、
どう考えても無理がある(わが国は一般的な分類では立憲君主制、
又は議会主義的君主制の国と理解できる)。

共産党は、もはや「天皇」という存在に白旗を掲げざるを得なくなった、
と考える他ない。
国民の圧倒的多数が「天皇」を受け入れている。
どころか、感謝さえしている。
にも拘らず、いつまでも「君主制の廃止」を唱え続ければ、
国民にソッポを向かれる。
野党共闘も出来なくなる。
政治的に手痛いデメリットしかない。
だから「君主制の廃止」という看板は下ろさざるを得ない。
だが一方、これまで「天皇制打倒!」を強く主張して来た手前、
すごすごとシッポを巻く姿を支持者に見せられない。
だから、上記のような見え透いた負け惜しみを言い募る結果になった。

「我々が逃げ出したのではない。敵がいなくなっただけだ」と。
しかし逆に、近年の「天皇」の存在感の巨大さは、戦後(名目的な)独立回復後、
かつてない程だろう。
今上陛下のご即位に当たり、国会は衆参両院とも、
共産党を含む全会一致で「賀詞」を議決した。
共産党は以下のような考え方を表明している。

「天皇の制度というのは憲法上の制度です。
この制度に基づいて新しい方が天皇に即位したのですから
、祝意を示すのは当然だと考えています」(志位氏)と。

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高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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