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大須賀淳
2025.9.13 16:39

島田三郎という人物がわかってきた

先日の記事「島田三郎の気になる資料」で触れた島田三郎による演説の筆記「開化に際する婦人の心得」やっと入手しました。

 

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全体の論旨は「女性への、西洋文化受容の推奨」なのですが、特に2ページ目後半を読むと、「女帝を立つるの可否」の討論で頑なに女性天皇を否定していた事との齟齬が見てとれます。

 

その部分を、現代語風にしてみました。


昔の時代には、日本ほど立派な国は他に無いように思われていました。

しかし今日では、少しでも地理を学んだ人なら、日本がとても小さく、豆粒のような国であることを知っているでしょう。

 

では、なぜ日本人がこれまでのような風俗を持ち、またそのような風俗を形作ってきたのか。その理由を探っていけば、すべては目と鼻の先にある支那の影響を受けてきたからだと思います。

 

支那は日本より文明の進み方が早かったため、文字を書いたり文章を作ったりすることにおいても、支那風を尊重してきました。なぜそうなったのかといえば、支那は日本より土地も広く人口も多いため、自然と日本はその影響を受けたのです。

 

では、この支那を西洋諸国と比べてみればどうでしょうか。その進歩はずいぶん遅れているではありませんか。

それなのに、日本が一歩を進めてだんだんと文明開化へ向かおうというのに、男性だけが文明の影響を受け、女性が依然として支那風の生活習慣に安んじているとすれば、これは大変に不都合なことではないでしょうか。

 

男性がすでに文明の影響を受けているならば、女性もまたそれに従うのは自然なことです。もし男性だけが文明化した生活を身につけ、女性だけが古い生活習慣にとどまるとすれば、日本という国は奇妙な結果を生むだろうと思います。

 

たとえば、夫婦の間にできた子どもを教育する際に、父親の慣習と母親の慣習が正反対であるようなことがあれば、その子はどんな教育を受けることになるでしょうか。これはまことに不都合であると言わざるを得ません。いや、そのようなことはあってはならないのです。

 

男性が西洋風の暮らしをするようになれば、それに伴って女性もまた同じように影響を受けるべきなのです。


 

こうしてみると、核となっているのは「古い習慣に固執せず、男女同じく〝西洋の進んだ文化〟を取り入れましょう」というシンプルな〝進歩的〟主張です。

 

しかし、この文中で島田が「ずいぶん遅れている」(原文では「其の進歩は甚だ遅い」)ものとして脱却を勧める「支那風」の代表格が、男系男子限定の根底にある儒教的価値観ではないか?

 

「女帝を立つるの可否」は1882年(明治15年)で、「開化に際する婦人の心得」は1887年(明治20年)。

 

5年のうちに考えが変化したのでしょうか?

 

私はそう思いません。島田による両方の演説に共通して感じられるのは「一般庶民は、変化をすんなり受け入れられるわけがない」という〝上から目線の思い込み〟です。

 

だから、これほど西洋化を推していながら、(西洋を中心とした)「19世紀の世界の潮流」である「男女が同じく継承できる」という考えも「パンピーが受け入れられるはずが無いから、天皇の尊厳を損傷することになってしまう!」と否定するんですね。

 

一方、島田自身が「女帝を立つるの可否」の演説中でも触れているように、日本においては古来から女帝が即位してきた国風がある事実を鑑みると、国民が女帝より皇婿に権威を感じると決めつけるのは甚だ無理があり、まさに「それってあなたの感想ですよね?」状態になっています。

 

肥塚龍による「保存すべき慣習と廃止すべき慣習を区別していない」という島田への批判は本当に的を射ており、浅慮なグローバリゼーションなどを振りかざしてマウントを取ろうとする現代のダメ知識人と本質は同じ。

 

そうして発せられた島田や沼間守一の言説が井上毅によって狡猾に利用され、古来からの国柄とも、時代の潮流からも遊離した(島田が卑下した「支那風」である)儒教的な「男系男子限定」の皇室典範につながってしまうのだから、愚かなオッチョコチョイでは済まないレベルの罪深さです。

 

そこから130年以上経った現代においても、普段は中国を罵っている政治家やネトウヨが、儒教的価値観に基づく、日本古来の伝統でも何でもない「男系男子限定」に固執しているんだから、出鱈目もここに極まれり!

 

この資料で、島田三郎がどんな人物だったかいっそう鮮明になったと感じるので、それを元に「島田三郎論破まつり」シリーズ再開して行きます!

大須賀淳

次回の開催予定

令和7年 12/13 SAT
14:00〜17:30

テーマ: 「歌謡曲を通して日本を語る LIVE in 横浜」

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