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高森明勅
2015.6.13 16:00

「いっぱい」から「数じゃない」へ

衆議院憲法審査会に招かれた3人の憲法学者が揃って、
集団的自衛権の行使容認を盛り込んだ安保法案を「違憲」とした。

更に、違憲論を唱える憲法学者が次々と名乗りを挙げる事態に。

これに政府・与党は大慌て。

普段は、余裕綽々で記者会見に応じている菅官房長官も、
些か調子が狂った。

「合憲とする著名な憲法学者もいっぱいいる」
という趣旨の発言をして、墓穴を掘る羽目に。

国会で辻元議員から
「いっぱいいる憲法学者の名前を挙げて」
と追及され、
事前通告を受けて、政府が全力で調べたはずなのに、
僅か3人の名前しか挙げられなかった。

百地章・長尾一紘・西修の諸氏。

そこで負け惜しみの啖呵が。

「数じゃないと思う」と。

確かに、学説の正否は多数決で決まるものではない。

だったら、端から「いっぱいいる」なんて言わなければ良かった。

自分らのロジックに自信が無いから、
何の根拠もなくその場しのぎの出任せを言うことになる。

そのため、折角「数じゃない」という、
それ自体は正論のはずのセリフを吐いても、
逃げ口上にしか聞こえない。

ちなみに、安倍政権のブレーンと称する八木秀次氏の名前が何故、
出てこないのか。

彼も一応、“本業”は憲法学者だったはずだが。

よもや違憲論とは想像しにくい。

とすると、一人前の憲法学者とは扱われていないということか。

それはともかく、自民党は憲法改正を掲げながら、
憲法学の動向に殆ど無知らしい。

安保法制では党内随一の論客を気取る高村副総裁も、
自衛隊発足当初、自衛隊を違憲とする憲法学者が大勢いた」
などと発言していた。

過去形で語るようでは、学説状況が丸で分かっていない証拠。

憲法学界では、今も自衛隊違憲論が堂々たる通説
(但し、
今回憲法審査会に出席した長谷部教授は、
東大法学部教授だったにしては珍しく合憲論。

正確には
憲法第9条が準則ではなく、
原理を示しているにすぎないのであれば、
自衛のための最低限の実力を保持するために、
この条文を改正することが必要だとはいえない」との立場)。

どうせなら、
それを取り上げて憲法学者を撫で斬りにするぐらいでなくちゃ。

それとも、そんな事実を知られてはますます窮地に陥ると考えて、
わざと過去形にしたのか。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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