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高森明勅
2016.10.9 01:00

天皇陛下に「平穏な時間」を

天皇陛下のお側に12年間お仕えした前侍従長の川島裕氏。

同氏がこの度、
『随行記―天皇皇后両陛下にお供をして』(
文藝春秋)
なる書を刊行された。

第1部「慰霊の旅」、
第2部「友好の旅」、
第3部「被災地を訪ねて」。

氏が身近に体験された尊く貴重な事実がいくつも紹介されている。

例えば(これは“前任者たち”から耳にしたことだが)
―「(
阪神・淡路大震災の当時)国賓として訪日した
アイルランド大統領に対し、
政府から宮中晩餐会での
音楽も自粛しては、との提案があり、
被災地ではない
東京で国賓を迎えるのにそこまでした方がよいもの
か、
宮内庁は苦慮したようだ。

陛下はかつて昭和天皇の御不例時にも過度の自粛ムードに対して
報をお出しになっているが、この時も宮中の動きが社会の傾向に
更なる拍車をかけるようになる
ことをご心配になり、
皇后さまに相談をおかけになっている。

結果は皇后さまが音楽をするかしないかという議論を越えた
第3の
道を模索され、それまでのシュトラウス等にかわり、
アイルランドの静かで優しいメロディーと、日本の歌数曲を交えた
プログラムをご試作、晩餐会場への入場も、
いつものエルガーの
『威風堂々』にかわり、
アイルランド民謡で友情を歌った
『Meeting of the Waters(2つの川の出会い)」
というしみじみとした曲を選んで当時の楽部指揮者、故近衛秀健氏の
意見をきかれ、氏の強い賛同のもと、
通常とは異なるものの、
時節にも合い、歓迎の意も充(み)
たした宮中晩餐会が開かれた…。

被災地への配慮を示す歌舞音曲の自粛は当然のことであろう。

しかしレクイエムのような鎮魂の音楽もあることであり、
両陛下は音楽を直ちに娯楽とのみ捉えることに違和感を
覚えられな
がらも、政府の危惧も汲まれつつ、同時に賓客への
礼をお尽くしになったのだと思う」。

もう一文だけ、「あとがき」の締め括りの一節を。

「…このように記すと、両陛下のご日程が災害関連の
ご訪問ばかりであるかのような印象を
与えるかもしれないが、
実際は、
前々からギッシリ詰まっているご日程の合間を
ようやく見付けての
さまざまな被災地ご訪問であった。

次第にお年を召されつつある両陛下にとって、
これからはもう少し平穏な時間が流れることを切に願う次第である

ー刊行の日付は8月10日。

かの「ビデオメッセージ」が公表された2日後だ。

両陛下に「平穏な時間」を、と私も祈りたい。

その為には最低限、皇室そのものの存続について、
しっかりとした見通しが立てられる必要があろう。

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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