ゴー宣ネット道場

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倉持麟太郎
2016.12.5 00:10

憲法審査会と過ぎし日の思い出

第1 再開

先週から、憲法審査会の議論が再開した。
衆議院においてが、実質的審議は昨年2015年6月4日以来。
昨年6月4日の憲法審査会といえば、憲法学者3人(長谷部恭男教授、笹田栄司教授、小林節教授)が、いわゆる安保法案について、そろって「違憲」と断じたあの日である。
あの日以来の開催であるから、その開催に要したカロリーたるや、バックトゥーザフューチャーのデロリアンが未来に行く時くらいの熱量であろう。

第2 中身は

さて、内容・テーマといえば、実質1回目(9月から、形式的なものだけは行われている)の11月17日は、「憲法制定70年を振り返って」等、11月24日は「憲法改正の限界、立憲主義」等であった。

安倍総理が、「憲法の議論は憲法審査会で」とあらゆる質問にも答弁拒否をして憲法審査会に場を譲った。待ちに待った(誰が?)憲法審査会での議論の内容について、ここからは叙事的に書こう。
【総論:大方のコンセンサスと考えていいもの】
・「押しつけ憲法論」は乗り越えよう
・日本国憲法の三大原理はおさえた上で改憲を議論しよう
・必要な項目は改憲してもよし

【各論】
改正項目としてあがったもの
・9条(しかしかなりトーン低め)
・環境権
・解散権の行使の制限
・緊急事態条項(議員の任期延長に限れば、民進細野氏も同調)
・憲法裁判所の創設(与野党から提案あり。)

【特筆すべきこと】
公明党の決意表明
・積極的に「押しつけ憲法論からの脱却」を表明
・憲法審査会での議論の仕方を提示(立憲的姿勢での議論を提示)
→これが、自民党に対する牽制なのかどうかというところはこれから観察しなくてはならない。

大筋としての議論の”流れ”は上記のようなものであり、これ以外の、明治以前くらいで頭がとまっている議員や、とにかく存在感をアピールするために他党を批判する品位のない議員の言説などは、愛嬌といえば愛嬌にも失礼な言説であり、語るに落ちると言わざるを得ない。
ここで上記の”流れ”につき評価すれば、プラスは、「改憲か護憲か」という二分論にはならなそうな雰囲気であること
マイナスは、現実のスピード感からして、まったくもって議論のスピード感が遅すぎるのと、最低限の共有されたシナリオもなさそうな「バラバラ」感に、こんなことでは、現実の変化にはまったく対応できないのではないかということだ。
大体、南スーダンへの自衛隊派遣や、自然災害等の危機管理の問題は、この瞬間にも決壊しかねないにもかかわらず、冒頭に「70年間を振り返って」とはあまりに牧歌的ではないか。
まるで、冒頭に「みんなでいった志賀高原(一同:しぃがぁこぉげん)」みたいな卒業式での思い出振り返りをしているようだ。そんな場合ではない。
また、各人各党がバラバラに発言をしており、会長の捌きもないので、コンセンサスが得られる要素がない。各党による「憲法草案」的なものの提出というシナリオも聞こえてくるが、そもそも、憲法改正原案は憲法審査会から提出するのであり、特定政党の草案を数の力で押し切るような性質のものではない。私個人的には、草案提示は是非積極的にやるべきであると考えているが、示し方によっては、またそれらがにらみ合って建設的な議論が進まないということになりかねないという危惧を覚える。
憲法自体が、特定の立場や時の多数派とは離れた価値観を規定するものだとすれば、憲法審査会での議論も、そのような憲法的な価値観のもと議論をされたい。

第3 どう見るのか

憲法審査会がこのままの体たらくで進むようだと、憲法改正にはあと70年はかかるだろう。親が亡くなったのに、それを隠して不正に年金を受給していたという事件が相次いだことがあった。憲法が死文化したにもかかわらず、”輝け憲法”として生きている「ふり」をしてはいけない。
憲法審査会では、各人が、ご都合主義的に、自己の主張を補強するために、切り貼りで議論を援用するようなことを厳に戒め、本来は、テレビチャンピオンのように、あまりに知的誠実性を欠く委員は脱落していく方式をとりたい。が、それでは、まさに立憲的ではなくなってしまうので、知的な最終ラインと知性への敬意及びマナーをわきまえることも含めて、”コンセンサス形成”を目標にしていただきたい。
そのためには会長の手腕も問われる。「手探り」というのはわかるが、プロなら、初球からスタンドに運べるよう準備すべきである。手探りで見逃し三振は言い訳にならない。
また、維新の掲げる教育無償化や、緊急事態対処のように、法律レベルで解決するマターを改憲議論に密輸入しないでほしい。これらを精査して、何が真に「憲法論議」の俎上に乗せるべきなのか、ということを、まさに知を結集して議論してほしい。
憲法改正を望むものは、改憲すべきであるという「立証責任」を負う。
戦後、憲法論壇は、憲法改正の必要性の立証のハードルに、様々なカードで挑んできた。それは「押しつけ憲法論」であったり、「時代の変化」であったりした。今回、様々なカードで改憲ハードルへの挑戦が試みられるだろう。緊急事態、教育無償化、憲法裁判所・・・これらのカードが、果たして立証責任を果たせるものなのか、また、法改正マターを潜り込ませていないか、厳しいふるいにかけて、王道の改憲議論によって、”コンセンサス形成”を目指してほしい。我々も、監視していかねばならない。

倉持麟太郎

慶応義塾⼤学法学部卒業、 中央⼤学法科⼤学院修了 2012年弁護⼠登録 (第⼆東京弁護⼠会)
日本弁護士連合会憲法問題対策本部幹事。東京MX「モーニングクロ ス」レギュラーコメンテーター、。2015年衆議院平和安全法制特別委員会公聴会で参考⼈として意⾒陳述、同年World forum for Democracy (欧州評議会主催)にてSpeakerとして参加。2017年度アメリカ国務省International Visitor Leadership Program(IVLP)招聘、朝日新聞言論サイトWEBRONZAレギュラー執筆等、幅広く活動中。

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