ゴー宣DOJO

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泉美木蘭
2018.4.19 03:02

セクハラと不寛容について

テレビをつけたら、事務次官と女性記者のセリフの応酬を
延々と女性アナウンサーがまじめな調子で読み上げてて、
なんだこの新しい世界観は? みたいなことになっている。

女としては、自分の嫌な「あるある体験」があったりするから、
私のようにセクハラ球をさらにフルスイング剛速球で返していく
タイプの自由人でも、女性記者の不快感のほうに共感する。
今朝の報道では、1年半前から会食に呼び出されてあの調子
だったというから、配置換えが叶わなかったとしたら、それは
ストレスだっただろう。

メディア側が「くそおやじの、くその部分を利用してでもネタ
とってこい」という姿勢で女性記者を差し向けてきていたのは
やはり事実のようで(メディアに限らないやり方だと思うが)、
上司は、セクハラを報道したいと相談されても応じなかった
ようだ。

テレ朝としては、この1年以上、いいからなんとか財務省から
森友情報をとれという
空気だったのかもしれないと想像するし
そのなかでのシワ寄せがあり、鬱積し、週刊新潮への音声提供、
そして記事が出た後の対応が、よりにもよって財務省としての
あの酷すぎる文書・・・という流れということだ。
テレ朝として財務省に正式に抗議する、とコメントを出して
いたけど、それも「いまさら」すぎるんじゃないかと思える。

でもハニートラップなのかあ?
相手が記者なら慎重になったりしないわけぇ?
と首をかしげるけど、音声を聞く限り、そのぐらいおっぱい
触って目を見てキスしたすぎる、もうやらしさが止まらない
おじさんなんだと思う。

あと、今回切々と感じたのは、女の場合、自分の中に鬱積して
いる嫌な体験と直結してしまうので、
一律に「女性一般」を被害者にして粛清に走ってしまう空気が
できてしまうことだ。
断罪されなきゃならないケースはいっぱいある。
ただ、セクハラは、生放送でも話したけど、やはり男性からの
やらしい言葉を「セクハラ」と受け取る人もいれば、
そうは受け取らない人、受け取っても切り替えしたり、
さばいたりする人もいる。

語弊がありそうで表現が非常にむずかしいけど、
最初はただ言われっぱなしでも、だんだん「個」が強くなり、
いつの間にかセクハラ男たちを上手に手玉にとってしまう、
男たちがただの金魚のフンに見えるような女性になっている時
もある。
女にも大物っているのだ。別にホステスに限らず。

男尊女卑はたしかにあるし、皇室、少子化に絡むまでの大きな
問題だから、解決する方向へ常に考えていくべきだけど、
女性が個を持つというところに目を向けないと、
ただ単に自由が制限されるだけになってしまうし、
寛容という名のもとに不寛容で、
平等という名のもとに不自然でいびつな言動を要求される社会
へと急進してしまう危険があるから、そこは考えたほうがいい
と改めて思いなおす。

心の痛みがわかるほど、他者に寄り添うときにバランスを
崩しやすくなるという複雑な難しさを、人間は抱えている
かもしれない。完全というものはない。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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