ゴー宣ネット道場

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切通理作
2018.9.2 12:44

死刑、それは人としての恩情

女子高生コンクリ詰め殺人事件の加害者である元少年が、再び理不尽に人を刃物で傷つける事件を起こして話題になった。

被害少女のことを考えただけで胸が痛くなるほどの残虐な事件を起こしたのだから、加害者本人もさぞかしおのれの罪深さにおののき、出家でもしかねない後半生を送っているのかと思いきや、もともとそのような情操が欠如しているが故の事件だったのだなと再認識させられた。

それどころか、ボクシングで一生懸命身体を鍛えていたらしい。その肉体を根拠にたいした理由もなく他人に言いがかりをつけたのだとおぼしい。ゴー宣初期の小林氏の見解に見られるように、身体という容れ物だけをいくら鍛えても、健全な精神などは決して宿らないことの証明なのだろうか。

否、そうではなく、身体とともに精神をも鍛えようと精進してきたのに、その鍛えたはずの精神力で押さえつけても押さえつけても、それでもまたもたげてくる暴力性の持ち主だったのなら、なおさら、当時いっそ死刑にしてあげた方が、未来の被害者はもちろん、当人にとってもよかったのではないかと思えてくる。

SPA!のゴー宣最新回で、小林氏が麻原彰晃こと松本智津夫の死刑に対し、罪人を人として扱う温情とみなしているのを読んで、その思いはより強くなった。

松本智津夫は教祖であることから事実上降り、一人の人間として、死刑を回避できる可能性に賭けて、恥も外聞もなく自分が精神異常に見えるよう演じ続けた。

獄中から教祖としての再臨宣言などをしなかったのは、そんなことをすればより危険人物扱いされて死刑が確実になると思ったからなのかもしれない。

サリンで大量に人を殺そうとする。それがバレたら自分も死刑になるかもしれない。そのぐらいの覚悟を持った人間ならよほどの思想的背景があるに違いない。

・・・と、いうようなかつての吉本隆明的期待は、まぼろしであることが明らかになった。

死を覚悟せず人を殺せる人間だっている。そういう人間が「宗教」を名乗ることもあるのだ。

切通理作

昭和39年、東京都生まれ。和光大学卒業。文化批評、エッセイを主に手がける。
『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞。著書に『サンタ服を着た女の子ーときめきクリスマス論』(白水社)、『失恋論』(角川学芸出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新著)、『ポップカルチャー 若者の世紀』(廣済堂出版)、『特撮黙示録』(太田出版)、『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)、『地球はウルトラマンの星』(ソニー・マガジンズ)、『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』(宝島社)、『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)など。

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