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小林よしのり
2018.9.13 14:24日々の出来事

ユートピアの医療システムはない

午前中に皮膚科に行って来た。
美人で優しい女医さんだから、わしは安心して通う。
わしの長年の肌の懸念を除去してくれ、美を保障して
くれるありがたい存在だ。

しかし日本の病院の治療費ってすごく安くて、そんな
子供のお駄賃みたいな値段でいいの?といつも思って
しまう。
薬がまた激安で、塗り薬2本で300円程度、ジェネリック
にしたら、もっと安いらしい。

もちろん、わしは今まで一般庶民よりは高額な保険料を
払い続けてきたんだから、それに比べればわし個人の
治療費なんておそらく一生、元を取ることはない。

高額所得者が払った保険料が、低所得の多くの人々の
治療費に回っているのだから、日本の医療は社会主義
みたいなものだ。
利用者にとっての医療を見れば、日本はすでに社会主義
のシステムが整えられている。

女医が多いエストニアや欧州諸国では、日本のような
利用者にとって天国の医療システムにはなっていない。
国民皆保険のない国では医療費が高くて、低所得層は
病院にも行けない。
日本のように自分の好きな町医者を選んで、好きな日時
に通える病院のシステムが、女医の多い欧州の国々には、
なかなかない。
利用者は、医療センターを通して、指定された病院に
しか行けないからだ。
女医にとっては最高のシステムがある国では、利用者に
とっては最悪のシステムの国ばかりである。

国柄によってシステムは違うのであって、医者が働き
やすいシステムをつくれば、患者はそのシステムに
合わせて、意識をガラッと変えなければない。
医者と患者の関係が、「信頼」や「情」で成り立つ
日本の医療システムを崩壊させて、信頼の代わりに
機械的・合理的に医者が働く「システム」を導入する、
それが朝日新聞や東京新聞が望む医療システムである。

斎藤美奈子や、香山リカや、多くのリベラル左翼が、
システムによって男女平等の医療システムをつくり、
外科医にも女医を増やせと主張するが、それは利用者
にとっては不便この上ないシステムになるだろう。

海外の事情を知らぬリベラル左翼は、日本は常に最悪
であって、海外ではすでにユートピアが実現している
と思っている。
自虐史観は歴史観だけでなく、彼らの人間観、人生観
の根本に植えつけられているのだ。

男女平等など、次善の策に過ぎない。
優位に置く価値は、国民の命、しかも低所得層までが
恩恵を受ける日本の医療制度だろう。
もちろんそれが現場の医者たちの過重な労働によって
支えられていることに、国民は敬意を払い、現場の
工夫で漸進的に改革していくしかないだろう。

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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