ゴー宣DOJO

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小林よしのり
2018.12.11 10:54日々の出来事

「ゴー宣道場」の感想

9日の「ゴー宣道場」は移民問題について、どこよりも
深く議論できたと思っている。
最初に新たなマトリックスを示したが、あれはまだ
書き込む項目があるので、「SPA!」連載の『ゴー宣』の
中できちんと整理して描こうと思う。
その説明も、もっと分かりやすく描こう。
「国民主義」(包摂の理念)と、「国粋主義」(排外の理念)
は、全然違うということも釘を刺しておかねばならない。

わしが「強欲資本主義」と言った時、倉持氏がわし
個人の偏見かイメージ操作のように思ったようだが、
「強欲資本主義」というのは、普通に使われている
言葉だ。
わしがひねり出した言葉ではない。
カルロス・ゴーンを見れば、金銭欲・強欲に歯止めが
かからない状態になっていることは明らかだ。
経営者の報酬の限度には「不文法」があることを、
ゴーン自身も内心、分かっているから、社員から不満が
出ないように、不正な手段を使っているのだ。
この「不文のルール感覚」は日本人に限ったものでは
ない。
フランスでもカルロス・ゴーンが日本の検察に拘束され
たとき、トマ・ピケティが「これがワンマン経営と
青天井報酬の末路だ」と言ったではないか!
法律家は明文化された法しか見えなくなるから気を
つけた方がいい。
法律家でリベラルとなれば、ますます「不文法」が
見えなくなる。

それから倉持氏は最高裁が「保守」だと言ってたが、
わしへの皮肉のつもりだったのか、あれには呆れた。
「保守」と「保守的」は全く違うということが、
分かっていない。
「保守的」は前例踏襲であり、因習でも変えられない
態度のことであり、思考停止のことだ。
「保守」「保守思想」は「慣習」や「常識」を重んじて、
「何でも自由じゃ」と「良き慣習」や「美徳」や
「不文法」を破壊していくリベラル・自由主義を
抑制していく態度のことだ。

保守は「因習」と「慣習」の差を見分ける力のことだ。
良き慣習を守りつつ、時代と共に、因習を漸進的に
取り除かねばならない。
この肝は今の自称保守陣営が全く分かっていない。
保守はバランス感覚であり、常に時代を見つめながら、
緊張感を強いられるから、この大衆化社会の中では、
大変難しい思想なのである。

それから山尾志桜里氏が「人権を守るために国ができた」
と言っていたが、100%の間違いだ。
中国・北朝鮮・中東の国々も、「人権を守るために」
国を作ってなどいない。
人権を守っている国など、世界には少数ではないか?
そもそも日本という国の成り立ちを考えれば、歴然だ。
日本は西欧列強の侵略から日本人を守るため、つまり
国民の軍隊を創るために近代国家になったのだ。
人権を守るためではない!

フランスは王制の圧迫から市民を守るために革命を
起こしたから、人権を守るためと言えるかもしれないが、
残念ながら「人権宣言」には「女性」は除外されている。
これはわしが「民主主義という病い」で詳述した。
国家以前に自然権としての人権があったという説は、
法律の教科書を無条件で頭に叩き込んだ秀才が陥る
罠だ。

倉持氏も最初に1人で「ゴー宣道場」で講演したとき、
基本的人権を自然権の文脈で説明していたが、今は
トーンが落ちていて、「フィクション」と軌道修正した
ようだ。
録画が残っているから見てみればいい。
だが、それでいいのだ。議論の結果として、自分の
間違いを軌道修正していかねば、議論の意味なんかない。

参加者の女性が山尾氏の「子供たち」感覚批判に異を
唱え、財政出動すればいいと言っていたが、あれには
感心した。
かつて日本的経営は「家族主義」だった。
松下幸之助は、だから経営の神様だった。
今じゃ大企業は、「人情」よりも、「契約」でしか、
経営陣と従業員の関係が繋がっていないから、平然と
従業員の首を切れば「コスト・カッター」と大絶賛され
る新自由主義に堕落した。
中小零細企業には、外国人労働者を「子供たち」感覚で
扱う人情深い「タコ社長」もいれば、セクハラオヤジも
いるだろう。
家族主義がセクハラを生む、契約主義がセクハラを生ま
ないという定理はなかろう。
わしは「男はつらいよ」の中では、「タコ社長」が一番、
感情移入できる。
わし自身が従業員を守る「タコ社長」の苦労を身に染みて
知っているからだ。

財政出動と言った女性は、何者だったのか、今度応募する
ときには「それは私です」と書いていて欲しい。
秘書みなぼんに分かるように。

しかし、「男はつらいよ」は全部見るべきだな。
あれが楽しめない奴は庶民感覚が分からないし、保守の
意味も分からない。
最低賃金しか出せない中小零細企業もあるし、最低賃金
で働かざるを得ない者もいるし、会社が潰れたら、その
従業員たちが月収20万円の会社に就職できるとは
限らない。
最低賃金でも働きたい者はいるのだ。
だからこそ、政府は外国人労働者の枠を拡げようとする
のだろうし、野党はそれに反対するのなら、人手不足で
瀬戸際にいる中小零細企業に「潰れろ!」と堂々と
「公」に主張しなければならない。
野党も新自由主義を認めるのなら、それしか選択肢はない。

小林よしのり

昭和28年福岡生まれ。漫画家。大学在学中にギャグ漫画『東大一直線』でデビュー。以降、『東大快進撃』『おぼっちゃまくん』などの代表作を発表。平成4年、世界初の思想漫画『ゴーマニズム宣言』を連載開始。『ゴーマニズム宣言』のスペシャル版として『差別論』『戦争論』『台湾論』『沖縄論』『天皇論』などを発表し論争を巻き起こす。
近刊に、『卑怯者の島』『民主主義という病い』『明治日本を作った男たち』『新・堕落論』など。
新しい試みとしてニコニコ動画にて、ブロマガ『小林よしのりライジング』を週1回配信している。
また平成29年から「FLASH」(光文社)にて新連載『よしりん辻説法』、平成30年からは再び「SPA!」(扶桑社)にて『ゴーマニズム宣言』、「小説幻冬」(幻冬舎)にて『おぼっちゃまくん』を連載開始し話題となっている。

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