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高森明勅
2019.4.4 07:00皇室

令とは善なり

私は漢字については全く素人。
 
だからその“由来”を探る場合は、
専ら藤堂明保『漢字語源辞典』
『学研漢和大字典』、
白川静『字統』『字通』などに頼る他ない。
この度発表された新元号の「令和」に含まれる
「令」について。
藤堂『語源辞典』の説明は以下の通り。
 
「人を集めて屈伏させることを表した
会意文字で、何かをいいつけて、従わせることを示している。
…令には神よりのものと、首長よりのものがある。
歴史的に考えると『神の令』の方が先であろう。
…令の基本義を…〈爾雅(じが)…〉に
『令とは善なり』とあるが、さらに正確にいえば、
令とは澄んで汚れなく、きれいなことである。
神々のお告げは汚れなく清い。
…令室・令兄のような敬称に用いられるのも、
その名ごりである。玉の清い音を玲(れい)といい、
鈴(すず)の清(す)んだ音に着目して鈴(れい)
といい、汚れない氷を冷(れい)という。
清い音楽を奏する楽人(がくじん)を
伶(れい)という」と。
 
漢字を理解する場合、
漢の許慎(きょしん、西暦30年生まれ124年に没)
がまとめた『説文解字(せつもんかいじ)』
(『説文』と略す)が長く“聖典”視されて来た。
勿論、藤堂博士も多く依拠されている。
 
ところが白川博士は、『説文』の権威を相対化し、
より時代が遡(さかのぼ)る甲骨文(卜文)や金文を重視された。
その『字通』の説明は以下の通り
(一部『字統』の記述を補う)。
 
「(『説文』の説明は)政令を発する意とするが、
卜文・金文の形は、神官が目深(まぶか)く礼帽を
著(つ)けて跪(ひざまず)く形で、神意を承(う)
ける象(さま)とみられる。
令・命は神意に関して用いる語である。
神意に従うことから令善(令とは善なり―引用者)
の意となり、(令名〔れいめい=名声〕・令聞
〔れいぶん=よいほまれ〕のように用いる
―『字統』より)また命令の意から官長の名、
また使役の意となる」。
 
『爾雅』(最古の字書、漢代の初期以前に成立)
に「令とは善なり」とあったのを知れば、
令和の出典にある“令月”が「万事をなすのによい月、めでたい月」
とされる理由も、理解できるだろう。
 
「令夫人」「ご令嬢」といった言葉なら、
私も日常生活で使っている。
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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