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笹幸恵
2019.8.3 18:08日々の出来事

ミュージカル「李香蘭」

十数年ぶりにミュージカル「李香蘭」を観に行きました。
演出家、故・浅利慶太氏の追悼公演。
ずっと野村玲子が主演を張っている。
30年近くなるのか・・・?
(これで10代の李香蘭も演じるのだからすごい)

浅利氏が劇団四季で手掛けた戦争三部作
「李香蘭」「異国の丘」「南十字星」
すべて観ていますが、その中で
切ないけど華やかさがあるのが「李香蘭」。
演出が本当に素晴らしい。
男装の麗人、川島芳子がストーリーテラーとなり、
満州国建国前後の時代が丁寧に描かれる。
関東軍の本音と建て前、
お飾りである満州国皇帝溥儀の姿、
ジャーナリズムが強硬に煽る様子、
海軍の「月月火水木金金」、
真珠湾攻撃のときの「トラトラトラ」という
モールス信号、わだつみのこえ、
シーンの一つひとつに浅利慶太氏の執念が感じられる。

入場したとき、配布されたのは
「語り継ぐ日本の歴史」という、
浅利氏が書いた文書だけだった。
そこには、こう綴られていた(一部抜粋)。

「戦時中の指導者の中には、前述した
非人間的な思い上がりがみえる。
そしてこの民を軽んじる『官僚主義』と、
これに不可分な『事なかれ主義』は、
過去も、現在も、日本人の社会を蝕む
宿痾ではないかと思い至った時、鳥肌が立った。
 いつか日本は、この戦争の『開戦』と
『敗戦』の責任を、情緒論には流されず、
自らの手でしっかりと裁き、歴史に刻印
しなければならない」

そんな思いで戦争三部作を手掛けたのかと
思っていたところへ、幕が上がった。
なんだかそれだけでウルウルしてしまった。
やっぱりすごい迫力だよね。

「李香蘭」は楽曲がすばらしいのも魅力。
『蘇州夜曲』『夜来香』はもちろんだけど、
松花江の歌も心にしみたなあ。

今回は、李香蘭を裁く上海軍事裁判所の裁判長の
歌声が一番良かった。
伸びがあって、落ち着きと温もりを感じさせる。
個人名が出ていなかったのだけど、
どなただったのでしょう……?



笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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