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高森明勅
2019.8.9 06:00皇室

昭和天皇は「御物」を差し出されたか?

終戦記念日が近づいた。
昭和天皇を巡るエピソードの1つ。
終戦直後の食糧危機の際の出来事だ。

昭和20年12月10日、昭和天皇は当時の松村謙三農林大臣を
宮中に呼ばれ、以下のように伝えられた。

「戦争で塗炭の苦しみを受けた国民に、
このうえ餓死者を出すことは自分には耐え難い。
政府の要請にアメリカは食糧を与えてくれないというが、
考えれば当方に代償として提供すべき何物もないのだから
いたしかたない。
それで、聞けば皇室の御物(ぎょぶつ=宝物〔ほうもつ〕)の中には
国際的価値のあるものが相当にあるとのことだから、
これを代償としてアメリカに渡し、食糧に代えて国民の飢餓を
1日でもしのぐようにしたい」。
そう仰って、帝室博物館の館長に命じて作らせた
皇室御物の目録を渡されたという(松村氏『三代回顧録』昭和39年)。

松村氏はこれを幣原喜重郎(しではらきじゅうろう)首相に渡し、
幣原氏がマッカーサーに同趣旨を伝えた。
これに対し、マッカーサーは以下のように答えた。

「天皇のお考えはよくわかるが、自分としてもアメリカとしても、
皇室の御物を取り上げてその代償に食糧を提供するなどは
面目にかけてもできない。
しかし国民を思われる天皇のお気持ちは十分に了解したので、
私が責任を持って必ず本国から食糧を輸入する方法を講じる」と。

その後、マッカーサーが実際にアメリカに食糧を要請した
事実が知られている。

この件に関して、昭和54年8月29日に記者らが直接、
そうした事実があったのかお尋ねしたところ、
昭和天皇のお答えは次の通りだった。

「そういうことがあったのは事実です。
しかし、自分のしたことですから余り公(おおやけ)に
したくありません」(朝日新聞、昭和54年8月30日付朝刊)

しかし、昭和天皇ご自身は謙虚に
「余り公にしたくありません」とお考えだったとしても、
国民は広くこの事実を知っておくべきだろう。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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