ゴー宣ネット道場

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泉美木蘭
2019.9.27 15:02日々の出来事

ロマンと現実とナルシシズム

『WiLL』掲載の『ゴーマニズム宣言』を読んだら、
あまりに強烈だったので、
それ以来、パロディの少女像のセリフと、
現実の少女像とが混ぜこぜになってしまい、
笑えて笑えてしょうがなくなってしまった。

今日も「文化庁へ抗議」という記事との絡みで、
少女像の写真が視界に入るのだけど、
なんかもう、その少女像から漫画の中の数々のセリフが
吹き出して見えるようになってしまい、すました造形や、
像をめぐっていきり立ってる人々とのギャップのすごさが
ツボすぎて、どうしても笑いがこみ上げてしまう。
これはやばい。しばらくツボから足が抜けそうにない。

***

ここしばらく、テレビよりラジオのほうが自由で面白く
感じるのでよく聞いているんだけど、
(主に講談師の神田松之丞のファンなんだけどね)
ニッポン放送の番組『テレフォン人生相談』がすごすぎて、
すっかりファンになってしまった。

電話で人生相談をしてきた相談者に対して、たとえそれが
いかなる境遇の人であっても、本人に欺瞞や認識のゆがみが
あれば、聞いているほうがヒリヒリするほど、
正面からバッサリ、鋭く、本気で指摘してしまう。

現実を言われて認めざるを得なくなり、絶句する相談者に、
それを受け入れやすくするため、情を込めた語り掛けで
フォローしていく様子は、ほとんど名人芸みたいだ。
激怒したり、支離滅裂に言い返す相談者もいれば、
説教する側が本気のあまり、涙を流して語りかける回もあり、
思わずもらい泣きまでしてしまう。

「人の不幸は蜜の味」と聞き耳を立てる私の意地の悪さと
絡まって、聞くのをやめられない。

その『テレフォン人生相談』のなかで、たびたび登場するのが、
「あなたは典型的なナルシストです」
という言葉だ。

人生相談で指摘されるのは、ナルシシズムをこじらせて、
自分にとって望ましい現実しか見ておらず、その世界の中に
身近な人々の現実が一切存在していない人だ。
ナルシストは、自分の立場がまずくなればなるほど、
苦しみのあまり現実離れした幼稚な思考回路に逃げ込み、
自己都合に捻じ曲げた言い訳や、感情のすり替えを行って、
すごくいびつで孤独なロマンチストになってしまう。
そして、自分だけが正義、あるいは被害者であるかのような
錯覚のまま、物を言いはじめる。

ナルシシズムをこじらせた人々の話す様子を聞いているうちに、
苦しくて痛いだろうけど、現実を認めることができたら、
道が開けて苛立ちも消えるのだろうなあと思うとともに、
なんだか、このナルシスト現象が「人生相談」の域をこえて、

国民のレベルに起きていることのように思えてくるのだった。
つまり、

日本人はダメな人間だという視点しかないナルシスト、
韓国批判なんてやっちゃだめなんだというナルシスト、
謝罪しつづけていればいつか理解されるというナルシスト、
少女像は神聖不可侵だと思い込むナルシスト、
友達として振る舞えば、国家間もうまくいくというナルシスト、
現代の人権感覚で過去の女性の待遇をなじるナルシスト、
ポリコレ棒をふりまわすナルシスト、
「廃刊」をチラつかせて抗議するナルシスト、
「人間みな平等」のナルシスト etc

ナルシストは自己都合の心地良いロマンを育み、それを振りまき、
そのロマンで他人を誘惑し、巻き込んでゆく。
治療するには、そこにある利害や、自分と他人との境界や現実を
バッサリと正面から思い知らせる必要があるから、相当な勇気と
覚悟がいるのだと思う。

そして、ナルシシズムは誰の中にでもあるもので、ある場面では
適切な働きを担ってもいる。
こじらせてロマンの世界に逃げ込まないためには、
いつも現実を直視する勇気を持っていなきゃいけない。
これが必要だけど、一番きついことだと思う。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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