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笹幸恵
2020.4.7 15:29日々の出来事

国家総動員法の現代版?

「国家総動員法」
戦争遂行に必要な「人的及物的資源ヲ統制運用スル」目的で
制定された。(昭和13年4月交付)
第一次世界大戦後、戦争に勝利するためには
総動員体制が必要だと考えられるようになった。
要するに軍隊だけが戦っていては勝てない、
国をあげて戦争に協力する体制が必要だというわけだ。
支那事変の勃発を背景に成立した。
軍需産業はもちろん、他の企業も金融も食糧も人も、
すべてが「戦争のため」とあれば統制を受けることとなった。

私の知る、あるおじいちゃんは、南方に海軍設営隊として引っ張られた。
兵士としてではなく、軍属としてである(当時18歳)。
電気関係の仕事をしていた彼は、南方の飛行場で
電気工事をすることになった。
これは、国家総動員法があったからだ。
ある日、身体検査を受けて、徴用令が届いて、
指定日時に指定場所に集合して、そのまま南方に送られ、
いつ死んでもおかしくない状況で何とか帰還した。
今だったらば、とんでもない「人権侵害」である。

私のまわりに、早く緊急事態宣言を出してくれと
言わんばかりの人がいた。
緊急事態宣言が出れば、コロナに感染しないとでも
思っているのだろうか。
ただの宣言で、何かが変わるわけでもない。
ちょっと考えればわかるでしょ?
でもこの人は、自分でモノを考えない。判断しない。
お上がそう言ってくれたら安心、だから早く宣言して、というわけだ。
不安と向き合えないので思考停止、のパターンだ。

不安の要因を作っているのは、メディアである。
毎日感染者数を発表し、都知事なんか毎日ネット動画で会見している。
「コロナ以外に大事なことはこの世にはないのよ!」
「夜の外出しちゃダメよ!」
「ロックダウンよ!!!」
「オーバーシュートよ~~~!!!!」
これだけ毎日毎日コロナのニュースをやっていたら、
大半の人は心配になるだろう。
インフルエンザの感染者数だって、こんなふうに煽られたら
大抵の人はビビるはずだ。
たいして報道もされないから、皆、フツーに生活している。
要するに私たちは、つねに限定された情報にしか
接していないし、接することができない。

不安に煽られた一般市民は、疑心暗鬼で攻撃的になる。
「マスクしてない!」
「花見なんか非常識!」
「東京ナンバーの車はうちの近くに来るな!」
皆で地域を守ろう。
その一致団結はバランスを欠けば管理社会を生む。
そのうち上からの管理を望む。
多少の私権が制限されても、それを望む。
自分たちでモノを考えなくても済むから。
「今は非常事態だからね!」と、嬉々として協力する。
外出しようもんなら、後ろ指をさされる。
現代版「隣組」だ。
異論は封じ込められる。
そのうち「忖度」する「優等生」が出てきて、管理社会が強化される。

なるほど戦争へと向かう「空気」は、
こうして出来上がったのだな、としみじみ思う。

「コロナなんか、かかるときはかかるよ」
「死ぬときゃ死ぬよ」
「経済回すことのほうが大切じゃないの?」
戦時中なら確実に非国民扱い、
特高警察にしょっぴかれているだろう。

緊急事態宣言が出て安心する人、喜ぶ人は、
80年余前の国家総動員法に積極的に協力した人たちだ。
そんなまさか、と思うかもしれないが、
自分の生活が国家権力に統制されることを望む、という意味では
同じである。

いやいや緊急事態宣言には強制力はないから、
要請しかできないのだから違うでしょ、と
言ったところで意味はない。
いきなりあんな総動員体制を構築する法律が
出来上がったのではない。
もともとは「軍需工業動員法」(大正7年)があり、
「戦時」に限定されて大量の軍需品生産を可能とする
体制があった。
あくまでも「戦時」だから、
最初はそれほど国民の生活に影響がなかった。
そのうち、状況に応じて法律の中身と名称が変わっていき、
より統制されるようになり、最後に行き着いたのが
国家総動員法である。
私権を制限し統制するためのスタートではなく、
いわばゴールだったのだ。


国家権力が私権を統制することの恐ろしさを、
結局のところ、日本人は歴史から何も学んでいない。
自らは思考停止し、結局はお上にすがり、お上に頼る。
そんな人たちがおじいちゃんの世代を批判する資格など
毛頭ないのである。


笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院在学中。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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