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笹幸恵
2020.5.4 14:34皇統問題

読売新聞アンケート

憲法記念日に合わせて読売新聞が
アンケートを実施。

天皇制についての質問では、
「女性天皇」賛成が67%。
共同通信が行なった調査では、
女性天皇に「賛成」「どちらかといえば賛成」が
85%だったというから、それからすると
かなり賛成派が少ないように感じられる。

が、そもそもの設問が興味深い。

(以下、下線は笹)
あなたは、天皇の皇位継承などを定めている
皇室典範を改正して、女性の天皇を認めることに、
賛成ですか、反対ですか。
賛成 67%
反対 8%
どちらともいえない 24%
答えない 1%

皇位継承に関しては、これまで、父方が天皇に
つながる「男系」の天皇だけで、母方が
天皇につながる「女系」の天皇はいませんでした。
あなたは、これまでと同じように「男系」を維持
する方がよいと思いますか、それとも、「女系」も
認める方がよいと思いますか。
男系を維持する方がよい 16%
女系も認める方がよい 59%
どちらともいえない 24%
答えない 1%

あなたは、戦後に皇族の身分を離れた旧宮家で、
父方が天皇につながる「男系」の男性
皇族として復帰させることに、賛成ですか、
反対ですか。
賛成 18%
反対 25%
どちらともいえない 55%
答えない 1%


女性天皇には皇室典範を改正しなければならないこと、
これまで天皇は「男系」で続いてきたことなどを
わざわざ記しているのだけど、それでも
「女性天皇」賛成は7割近く、
「女系天皇」は6割近くにのぼっている。

言うまでもなく、この設問はじつに恣意的。
女性天皇には皇室典範の改正が必要だけれども、
旧宮家の男系男子を皇族に復帰させるのにも
典範の改正が必要だ。それなのに記されていない。
真ん中の設問中、「これまでと同じように云々」というのも、
現状維持バイアスをかけている。
そして「復帰」ではなく、正しくは皇籍の「取得」である。


さらに厳密にいえば、天智天皇や天武天皇は、
父も母も天皇である。彼らは「女系男子」と
カテゴライズすることだって可能なはずだ。
また元明天皇から元正天皇は、女系での継承。
元正天皇の父は草壁皇子だから男系の血筋、
だから「男系で続いてきた」「それが伝統だ」と
強調するには無理がある。
いくらなんでも、天皇となった女性より、
皇子であった男性の血筋を優先するか?
(男系に固執する人は、それでも優先するから
男尊女卑といわれ、原理主義者と呼ばれるのだ)。

ここまで恣意的な設問を設けても、
女性天皇賛成7割、
女系天皇賛成6割。
要するに国民は、一部の原理主義的な血統など
重要視していないのだ。
理由は明らか。
私たちは、天皇の「血」を有難がっているわけではないからだ。

政府は、この明瞭なる結果をも無視するのか?

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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