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高森明勅
2020.6.17 06:00政治

「忘恩の義務」という忠誠

「忘恩の義務」という言葉がある。
元々は、フランスの憲法院長を務めた
ロベール・バダンテールの言葉だが、
「自己の任命権者に対しても裁判官自身が独立性を守るべきことを
要求する義務」を意味する語として、
広く使われているようだ。

フランス憲法院の院長は大統領によって任命される。
しかし、憲法院長が任命権者の大統領に忖度(そんたく)していたら、
大統領選挙の適法性を監視し、法律の合憲性を審査するなどの
権限を持つ憲法院のトップとして、その職責を全うすることはできない
(フランス第5共和国憲法第7章)。

大統領が自分を院長に任命してくれたという私的な「恩」を完全に
“忘却”することこそ、憲法院長たる者の神聖な公的「義務」でなければ
ならない。

これは勿論、フランスに限らない。
わが国の場合、最高裁判所の長官は内閣の「指名」による(日本国憲法第6条)。
しかし、司法のトップである最高裁長官が内閣総理大臣(行政のトップ)
に忖度しているようでは、三権分立という“理念”の意味が無くなる。
そんなことでは、憲法上、最高裁長官を(内閣の指名に基づいて)
「任命」されるお立場の、天皇を裏切る結果になるだろう。
内閣に対し、「忘恩の義務」を深く自覚してこそ、わが国における
“公(おおやけ)”の究極の体現者たる、天皇への忠誠を尽くすことが
できる、と言うべきか。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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