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泉美木蘭
2020.6.23 17:32

あるスウェーデン評

次は、イギリスのメディア記事より。
スウェーデンに対する評価がおもしろかったので、
一部を抜粋して、翻訳して紹介します。

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スウェーデンは、コロナ以前は社会民主主義的左翼の青写真と
見られていたが、コロナ以降は「無謀」「危険」と表現され、
いまや「極右のモデル」という目で見られている。

国際メディアは、スウェーデンを「スカンジナビア諸国」ではなく
「サウジアラビアの独裁国家」であるかのような言葉で取り扱い、
無害なこの国を酷評している。

もともと、ロックダウンの目的は、「感染曲線を平坦にすること」、
つまり医療機関を逼迫させないようにウイルスの拡散を遅らせる、
ということだった。
このシナリオは、市民の自由を奪い、経済の衰退を正当化する
重大な理由となった。

ところが、いざ封鎖がはじまると、ゴールポストが移動した。
現在、ロックダウンは「感染者や死者を完全に減らすため」という
目的で推進されているのである。

オックスフォード大学の研究によれば、世界中の政府による
ロックダウン政策が、死亡者数にはほとんど関係ないことが
示されている。
全体的に眺めると、スウェーデンは他国より多くの死亡者は
出しているが、ロックダウンされたスイスと同程度であり、
また、ロックダウンされたイギリス、スペイン、オランダは、
スウェーデンよりもはるかに多い死者を出した。

だがコメンテーターたちは、スウェーデンの経済が、
厳しい制限措置をしなかったにも関わらず打撃を受けた、
という事実を喜んでいる。

スウェーデンの政策を「自由に生きて死ね」と誹謗中傷した
ある評論家の記事には、スウェーデンのGDPが6.1%減となる
予測であることが指摘されていた。
だが、EU全体では、7.4%の落ち込みが予測されている。

しかも、ロックダウン政策をとったことで、驚異的なレベルの
経済的苦痛が予測されている国も少なくない。

イタリアのGDPは9.5%縮小、スペインは9.4%縮小するという
予測なのだ。
この経済の縮小もまた、ウイルスと同じく、人命を奪うことに

なるのである。

スウェーデンを酷評する批評家は、他のスカンジナビア諸国との
比較はするが、ヨーロッパや世界全体と比較することはない。
ノルウェー、デンマーク、フィンランドは、
たしかにスウェーデンより死者数は少なく、優れた対応に見える。

だが、ノルウェーとデンマークから届くニュースは、
ロックダウン肯定派にとってそれほど良いものではない。


ノルウェーの保健局長は、最近、ウイルスの実効再生産数が、
ロックダウンが実施されるより前に1以下になっており、
すでにピークアウトしていたことを発見した。

これを受けて、ノルウェーの公衆衛生機関責任者は、
「ロックダウンではなく、オープン状態を維持しながら
感染対策を行うことで、同じ効果が得られ、
(経済的な)不幸な影響を避けることができたかもしれない」

と結論づけたのである。

一方、デンマークからは、保健局が勧告したロックダウンの
必要性を、首相が国民に伝えたことは、

「医療上の助言の乱用だった」
とする主張が出ている。
実際には、デンマーク保健局は、ロックダウンなどの
過酷な措置のほとんどを推奨してはいなかったという。

地元紙によると、同局のソーレン・ブロストローム局長は、
「極端な状況を除いて、デンマーク人の自由を妨害する措置
については特に除外した勧告に、署名した」

と話しているのだ。

スウェーデン人は、新型コロナに対する免疫力を他国の人々
よりも早く持つようになるのか。
あるいは、奇跡の治療法が登場するのか。

それは時間とともにわかることだろう。
ただ少なくとも、スウェーデンは、国際的な怒りに見舞われても、
「新型コロナ・ヒステリー」に対する免疫力を持ち、
オープンで文明的な戦略を維持してきた。これは評価に値する。

Why they hate Sweden
Writer: Fraser Myers

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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