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高森明勅
2020.6.29 06:00政治

「緊急事態条項」が不可欠な理由

憲法に「緊急事態条項」が必要かどうか。
どの国も、平時の統治のやり方では対応できない
“緊急事態”に直面する可能性を、100%排除することはできない。
その場面では、憲法が保障している国民の権利や自由も、
恐らく大幅な制約を余儀なくされるはずだ(そうでなければ実効的な
対応が困難だろう)。
しかし、憲法上の権利や自由が制約されるのであれば、
何らかの法的根拠が当然、求められる。
それが、憲法より“下位”の「法律」によって制約されてしまう
のであれば、そもそも最高法規としての「憲法」の存在意義が
問われる。
従っても、憲法の価値とその実効性を“守る”為には、
どうしても憲法の中に“予(あらかじ)め”(どのような条件と
手続きで、いかなる措置が許されるか等を規定した)
緊急事態条項を盛り込むことが欠かせない。
…というのが、私の素人なりの考え方。
これについては、専門家の以下のような見解が補強してくれそうだ。
「戦争・内乱・恐慌・大規模な自然災害など、
平時の統治機構をもっては対処できない非常事態において、
国家の存立を維持するために、国家権力が、立憲的な憲法秩序
一時停止して非常措置をとる権限を、国家緊急権という。
この国家緊急権は、一方では、国家存亡の際に憲法の保持を
図るものであるから、憲法保障の一形態と言えるが、他方では、
立憲的な憲法秩序を一時的にせよ停止し、執行権への権力の
集中と強化を図って乗り切ろうとするものであるから、
立憲主義を破壊する危険性をもっている。
したがって、実定法上の規定がなくても、国家緊急権は
国家の自然権として是認される、とする説は、緊急権の
動を事実上国家権力の恣意に委ねることを容認するもので、
過去における緊急権の濫用(らんよう)の経験に徴しても、
これをとることはできない」(芦部信喜氏)
「国民の側から公権力を拘束することを基本とする
近代憲法の原則的立場からいえば、非常時での公権力の
例外的発動を容認する緊急権は、実定憲法の明文の根拠が
ない限り否定されなければならない」(樋口陽一氏)
以上のようであれば、いわゆる護憲派・立憲主義者・リベラルこそ、
国家緊急権の発動を政治権力の「恣意に委ねること」を許さず、
「立憲的な憲法秩序」を守る為に、緊急事態条項の“必要性”を
率先して訴えるのが本来ではあるまいか。
【高森明勅公式サイト】
高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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