ゴー宣ネット道場

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笹幸恵
2020.7.14 19:59日々の出来事

「GoToキャンペーン」を日本軍にたとえる愚

今日のモーニングショーでは、玉川徹が「GoToキャンペーン」に
反対して、またしても政府の姿勢を日本軍になぞらえた。

まずは、ご覧になっていない人のために、玉川徹が何を言ったか、
ざっくり文字起こし。

決めたことだから、感染者が増えても、
それで犠牲になる人が増えても、この「GoToキャンペーン」は
止められませんっていうことでしょ。
ほんとね、旧日本軍に似ているんですよ。
僕も最近またガダルカナルの失敗の本を読みましたけど、
あれも、第一波、第二波、第三波とやるんですけどね、
第三波の頃なんか、うまくいかないと思っているんだけど、
それでも決めたことだから、空港を奪還しなければいけないからといって、
送り込むんですよ、さらにね。それで莫大な犠牲者を出す。
なんかそういう部分が全然変わっていないと思うんですよね。

もはやツッコミどころが満載で、絶句するほかない。
玉川徹は、三重の間違いを犯している。
1 コロナに対する認識(恐怖のあまり、感染者数しか目に入らない)
2 日本軍に対する認識(完全悪玉論&結果論者)
3 間違っている1を、間違っている2にたとえるので全くの的外れ、
  もはや支離滅裂

まず1について。
犠牲というけれど、感染しても無症状の人が多く、
ここ数日の死亡者はゼロ。驚くべき低水準が続いているにも
かかわらず、感染者数だけに振り回されている。
コロナ以外にも、ウィルスはたくさんいるし、
コロナより重篤な病気は完全スルーのこの奇妙さ。
ウィルスは撲滅するものではなく、共存するしかないという、
ごく当たり前の常識も持ち合わせていない。

そして2について。
付け焼刃でガ島戦の本を読んだんだろうけど、認識が浅い。
第1波とは一木支隊、第2波とは川口支隊、第3波とは第二師団の
ことを指しているのだろうが、
「第3波の頃なんか、うまくいかないと思っている」とは、
いったい日本軍のどの階層レベルの話をしているのだろうか。
確かに、大本営の戦争指導班では、ガ島戦の頃から船舶輸送が
行き詰まり、悲鳴に近い記録を残している。
しかし一方で、大本営は、戦局を見据えて第二師団(のちの第三波)を
第十七軍(ソロモン・ニューギニア方面を担当)に編入している。
これが昭和17年8月31日。
第二波である川口支隊の総攻撃失敗の前の話だ。

部隊は、将棋の駒のように簡単にあっちにやったり、
こっちにやったりはできない。だから早め早めに対応をとる。
それでも日本軍はもてる戦力で臨機応変に対応しようとした。
攻撃失敗後、第十七軍は隷下の第二師団をガ島に送り込むことにした。
この時点では「うまくいかないと思っている」どころか、
いよいよ本格的に奪回作戦を行なおうとしている局面だ。
「決めたことだからしぶしぶ現場が従っている」のでもない。

というか、そもそも「決めたことに従わない」などという
部隊があったら、軍隊は成立しない。会社組織だって同じでは?
そんなこともわからないのだろうか。

ちなみにね、「空港」だなんて言いませんよ。
最前線の戦場に「空港」なんてあるわけない。
奪還するのは「飛行場」でしょう?
この言葉ひとつとっても、ガ島の状況なんか何一つ理解して
いないことが明白。

そして3について。
ガ島戦を「決めたことだからと無謀な作戦を遂行して莫大な犠牲者を出した」
と決めつけているけど、そんなものは結果論に過ぎない。
結果を知って、安全地帯に立って物を言っているだけ。
同じとき、同じ立場に、同じ軍人としてそこにいたならば、
じゃあどんな作戦を立てることができたんですかね????
しかも、その前提に立って「GoToキャンペーン」をガ島戦になぞらえるのは、
悪質な印象操作でしかない。
コロナとは共存するしかないのだから、喫緊の課題は
とことんまで落ち込んだ経済を活性化させること。
そうでなければ、文字通り私たちは「生きていけない」のだから、
当たり前の話だ。

「決めたこと」だからやるのではない。
「皆が生きるため」にやるのだ。
戦力をやみくもに投入するのではない。
政府は戦力を回復させようとしているのだ。
それがわからない?

追記。
日本軍の硬直化した思考を批判したいのだろうけど、
私からすれば、感染者数の増加にばっかり恐れおののいて、
「移動はするな」「経済とめろ」とナントカの一つ覚えのように
繰り返す彼こそ、戦局を大局的に眺めて戦略を変えることができない、
硬直した「旧日本軍」そっくりに見えるのだが。
笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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