ゴー宣DOJO

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泉美木蘭
2020.9.10 12:02

同調圧力むんむんのピーチ航空事件

ピーチ航空の件、『グッとラック!』で
機内の映像や当事者の男性へのインタビューをやっていたけど、
私の見た範囲では男性が「大騒ぎ」
「威嚇」しているようには
感じなかった。

同乗していたほかの乗客のインタビューも見たけど、
「大騒ぎしていた」と言う人もいれば、
「当事者は至って冷静で、腕を組んで座っていた。特別な大声
ではなかった」
と言っている人もいる。

「大騒ぎ」という表現ひとつですら、人によって受け取り方が
違うわけですよ。
それは飛行機というそもそも不安な場所に搭乗している人の心理や、
到着時間が遅れたことへの個人的な苛立ちの度合い、
コロナ脳の度合いによって、男性に対する偏見の持ち方が違うと

いうことなのでは?

さらに驚愕したのは、ピーチ航空が臨時着陸して、警察を呼んで、
男性を降ろさせたときのシーンだ。
男性は素直に従って降りていくのだけど、その時、乗客たちから
拍手喝采が上がっている。私はここにめちゃくちゃ恐怖を感じた。
これについて、インタビューを受けた当事者の男性は、

「拍手が起こるということは非常に悲しい、残念なことだと思います。
同調圧力に沿わない人間の排除に、喝采を送る匿名の乗客たちの姿に、
私は、コロナ後の日本社会の縮図を見たような気がいたしまして、
非常に残念な思いになりました」

と、かなり理路整然と、丁寧な言葉で話していた。
まったくその通りだと思った。

志らくは、このインタビューを聞いても、
迷惑な人だ、みんなが待たされたのに30も過ぎてどうして
自分の主義主張が正しいと
言ってるんだ、なんて言っていたけど、
私に言わせれば、30も過ぎたら、

「全員がマスク着用の“お願い”に従わなければ飛行機を飛ばさない
なんて頑固なことを言っているほうがおかしいだろう。
だいたいその彼は咳もしていないし、鼻水も垂らしてないじゃないか。
彼一人がマスクしていないだけで、どんな影響があるんだよ?
そもそも、飛行機のなかじゃ、みんな静かにスマホや雑誌を見ながら
時間を過ごしているんだよ。
マスクしておきたい人もいれば、したくないし、する必要もない人も
いて当然なんだから、さっさと離陸してくれよ!」

と言うのが普通なんじゃないの?
そりゃ急いでる、従っておかないとどうにもならん、というので
仕方なくマスクしてる人はいっぱいいるんだけど、
この事件は、そういう同調圧力と、それを生み出した間違った
サイエンス、警察まで動員した件について考えることがテーマでしょ。

弁護士の山岸久朗という人は、
「私は見ていないが、侮辱罪だ、謝罪しろと大声で言っていた
という情報もあるから、そうであれば業務の妨害になる」
と言って、当事者の男性を叩いていたけど、これもおかしいよ。

そもそもCAの対応のほうが非常識なら、乗客の男性がそう
主張するのは当たり前ということになるでしょう。
正当な意見を言ってはいけないんですか?
弁護士なのに、はなから「マスクしない奴が悪い」という結論しか

なくて、全然、「Justice as Fairness」じゃないです。
正義の天秤が働いていないですよ。

コメンテーターの中では、画家の中島健太という人が一番まともだった。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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テーマ: ゴー宣DOJO in名古屋「人権カルトと日本人論」

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