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高森明勅
2020.11.19 06:00政治

「三島事件」アンケート(2)

『諸君!』平成11年12月号の「三島事件」アンケートの続き。
田中角栄元首相の秘書だった政治評論家の早坂茂氏。

「(事件当時)4期目の自民党幹事長に留任した田中角栄の政務・政策秘書だった。
…事件知ったのは、衆議院2階の自民党幹事長室である。
角栄が『バカもん』と呟(つぶや)いた。
…予言者は世に容(い)れられず。
…お仕着せ憲法の見直しは行方(ゆくえ)定めぬ波枕。
平和ボケの世間は事件を忘れた」

元安藤組の組員で、作家だった安部譲二氏。
「三島由紀夫先生は楯の会の軍資金を捻出なさる為に、僕をモデルにした
『複雑な彼』という小説を女性週刊誌に連載なさったこともあって、
お親しく願っていたのです。
その(事件の)前の晩に、呑(の)んでいらした六本木のミスティーから
電話を下さって、『この店にある僕のボトルは、貴君に進呈するから呑んでくれ…』
と突然おっしゃったので、どこかへ長い御旅行にでもおいでになるのかと、
ちょっと怪訝(けげん)に思っていたのですが、真逆(まさか)、
御自分の主義主張を、自在に発表なされる三島由紀夫先生がこんなことをなさるとは、
その当時はゴロツキだった僕にも、とても想像のつくようなことではありません」

文芸評論家の入江隆則氏。
「私は、三島由紀夫は共同体の魂を呼び戻し、あるべき姿の天皇を召喚するために、
彼の『私的な死』を『使った』のであって、その意味で『死による自己の社会化』
を果たしたのだという見方を示しました。
そして深い敬意を表明しました。
…以来ずっと、この見方と敬意とに変わりはありません」

作詞家で作家のなかにし礼氏。
「絶えず真剣に生きることを望み、『にせものの平和、にせものの安息』
(『白蟻の巣』)を軽蔑する姿勢は、今となってみれば、だらだらと
生きるわれわれへの痛烈な批判となっている。
現代の日本人のありようを予見していた天才だったと思う」

安倍内閣で内閣官房副長官(事務担当)だった的場順三氏。
「最近私にも、あの事件の本質には、次のような背景があったに
違いないことが、わかるようになった。
すなわち、三島氏が、当時『日本はグリーンスネーク(ドル紙幣)
に呪われている。』と、よく周辺にもらされており、つまりは祖国の将来に、
明るい展望が持てなかったのではないかということである」

評論家の西尾幹二氏。
「自宅にいてニュースを聴いた。
脚がふるえた。腰から下がしばらく動かなかった。
恐怖ゆえであった。
他人(ひと)ごとではなかったからだ。
私は自分が問われたと思った。
…三島事件は日本史の分水嶺(ぶんすいれい)をなす象徴的事件である。
事件の前と後とで、くっきりと時代が2つに分れる。
戦争は分岐点にならない。
精神の型のあった時代、マスコミがまだ小さく、
言葉と人格の一致が見えた時代――そういう時代が三島氏の死と共に去った。
なぜ彼が自決したかという答えもここに含まれている」

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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