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高森明勅
2021.1.3 06:00皇室

天皇・皇后両陛下からビデオメッセージ

新年に当たり、宮内庁は、天皇・皇后両陛下から国民への
“おことば”を、ビデオメッセージとして公表した。
両陛下の国民への濃(こま)やかなお心配りが拝され、有難い。
先ず、天皇陛下のおことばから。

「この(新型コロナウイルス)感染症により、私たちの日常は
大きく変わりました。
特に、感染拡大の影響を受けて、仕事や住まいを失うなど困窮し、
あるいは、孤独に陥るなど、様々な理由により困難な状況に置かれている
人々の身の上を案じています。

感染症の感染拡大防止と社会経済活動の両立の難しさを感じます。
また、感染された方や医療に従事される方、更にはその御家族に対する
差別や偏見といった問題などが起きていることも案じられます。
その一方で、困難に直面している人々に寄り添い、支えようと活動されている
方々の御努力、献身に勇気付けられる思いがいたします」

「私たち人類は、これまで幾度(いくど)も恐ろしい疫病や
大きな自然災害に見舞われてきました。
しかし、その度に、団結力と忍耐をもって、それらの試練を乗り越えて
きたものと思います。
今、この難局にあって、人々が将来への確固たる希望を胸に、
安心して暮らせる日が必ずや遠くない将来に来ることを信じ、
皆が互いに思いやりを持って助け合い、支え合いながら、
進んで行くことを願っています」

「即位以来、私たちは、皆さんと広く接することを願ってきました。
新型コロナウイルス感染症が収まり、再び皆さんと直接お会いできる日を
心待ちにしています」

次に、皇后陛下のおことばから。

「この1年、多くの方が本当に大変な思いをされてきたことと思います。
今年が、皆様にとって少しでも穏やかな年となるよう心からお祈りいたします」

憲法に定められた天皇の国事行為の多くは、天皇陛下お一人だけでなさる。
しかし、公的行為については、皇后陛下とご一緒だったり、
他の皇族が加わられる場合も、しばしばある。
この度のビデオメッセージは、新年一般参賀でのご挨拶に代わる性格を持ち、
陛下からの懇篤なおことばと共に、皇后陛下からもおことばを戴いたことは、
国民が直面している困難に対する、両陛下のご憂念の深さによるものに
他ならないだろう。

忝(かたじけ)ない。

改めて言う迄もなく、今回のことは、上皇陛下の2回にわたる
お心のこもったビデオメッセージの前例があってこそ。
そのことも銘記したい。

ちなみに、一般参賀の際に、天皇陛下がマイクを通して、直接、
国民におことばを賜るようになったのは、昭和天皇が80歳のお誕生日を
迎えられた昭和56年4月29日から。
これは、昭和天皇ご自身の強いご希望による。
その時は、現在のような備え付けのマイクではなく、係員が
わざわざスタンドマイクを運んでいた(恐らく、恒例になるとは
予想していなかったのだろう)。
おことばの内容は概(おおむ)ね以下の通り。

「今日は誕生日を祝ってくれてありがとう。
大勢の人が来てくれてうれしく思います。
これからも皆が元気であるよう希望します」と。

勿論(もちろん)、この時の国民の感激はとても大きかった。
若い世代の中には、参賀の際に、陛下からおことばを戴くのが
当然のように錯覚している人がいるかも知れないので、念の為に付言しておく
(もとより、この度のビデオメッセージも決して当たり前ではない)。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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