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泉美木蘭
2021.1.3 11:56

「スウェーデンは例外主義」という自己正当化

憲法にのっとり、国民の自由を可能な限り担保しながら、
ウイルスとの長期に渡る“共存”を最初から考えている
スウェーデンの緩和政策を、
「自分たちだけは大丈夫」という思い込みにもとづく
「例外主義」だとレッテルを貼る言説があるらしい。
似たようなことを玉川徹が言っていたと思う。
「自分たちだけは大丈夫だ」というバイアスがあると。

「強権発動して都市封鎖し、経済にブレーキをかけるしかない」
という選択肢のみを信じ、そのためなら多くの人々の生活が
破綻しようと、自殺者が増えようと、子どもや学生の精神が
異常をきたそうと、おかまいなし、
何の罪もない人々を追いやって、
自分では直接手を下さない形で踏み殺している。
その上で、異論を一切許さないコロナ恐怖全体主義を作り上げ、
「コロナにさえかからなければ大丈夫」と妄信することで
自分の正当性を主張したがる人間こそが、
「コロナ例外主義」だろう。凄まじいエゴイズムだ。

国や地域ごとに個別の事情、個別の条件があり、
感染症対策の内容も、その結果も異なるのは当たり前だ。
スウェーデンは、余命短い高齢者に人工呼吸器を装着してまで
延命することは「虐待」だと捉える国柄でもあるが、
高福祉・高負担の制度のなかで、
介護施設の民営化を進めてきたことで、コロナ以前から、
施設の脆弱さ、ケアの質が問題になっていた。

高額な社会保障費を避けるために、
低所得層の移民をパートタイムで雇うケースが増え、
コロナ禍では正規職員が休んでいる間も、
感染して症状の出ているパートタイマーが働き続けて、
感染を広げてしまったと検証されている。
しかも、移民のなかにはスウェーデン語が正しく理解
できない人々もいた。
ロックダウンしていても、介護施設の老人を孤立無援にして
放り出すわけにはいかず、同じ結果になった可能性のほうが
高いだろう。
もともとあった問題が、コロナによって一気にあらわになり、
その国全体で共有しなければならない社会課題が見えた。
それを「私たちにとっての失敗」と、受け止めているのだ。
「例外」でなく「冷静」に検証した結果だと私は考える。

日本は外国人労働者の受け入れについて議論が巻き起こった
経緯があるのだから、
バカにしている暇があったら、
今後の国家運営を考えるためのかなり貴重な話として、
研究しておくべき事象でもあるはずだ。

おまけに、その国特有の事情を知ろうとも考えようともせず、
レッテル貼りだけをしたい人間は、
立憲君主国の国王の発言とはなにかということも知らない。、
スウェーデン国王の「失敗」発言報道に疑問も持たない。
ただただ「ゆるい対策が失敗だったと国王が政策批判した」
としか受け取っていないというひどい短絡さだ。

「私たちの国においては」「日本では」と個別に考えることは、
全体を見ながら、足元の複雑な問題を精細に把握して考え、
さらに人々を納得させながら議論していかなければならず、
大変な作業だ。
しかも、すでにこれまで「コロナ怖い」のみで突っ走ったために、
気を緩める暇もなく働いてきた大勢の人の人生を踏みつぶし、
死に追いやってしまったという大失敗がある。
それを認めなければならない。改めなければならない。
それが怖い、それが痛い、責任を感じたくない、認めたくない、
そんなエゴにこびりついた怯えの裏返しが、
異論・両論を許さない態度だ。
心理バイアスに頼って自己正当化をしながら、人を殺すな!

 

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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