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高森明勅
2021.1.27 06:00政治

福沢諭吉の平等的「女性」観

明治時代の代表的な思想家、福沢諭吉。
その「女性」観について以下のような指摘がある。

「注意すべきは、福沢〔諭吉〕が常に、女性も男性も
『万物の霊〔世界のあらゆるものの中で最も優れた存在〕』として
『軽重〔けいちょう〕の別』(どちらかが重要であるという区別)
のない等しい人間として扱っていることです。

彼は、『一人前の男は男、一人前の女は女にて、自由自在なる者』
(『学問のすゝめ』)と述べています。
そして男女の異なるところは『生殖の機関のみ』であって、
それについても軽重の差はないといい、心の働きは同様なので、
男子のすることで女子にできないことはないのだと
主張するのです(『日本婦人論後編』)。

…福沢の思想が、女性を差別していた西洋の自由主義とは
異なることがわかるでしょう」

「福沢の議論を見た時、最も重要な点は、やはり女性を
男性同様『万物の霊』として対等に扱っている点でしょう。
『万物の霊』であるかどうかは『智』と『徳』の発達により
測られますから、男女の性における違いは評価に関わってこない
のです」

「西洋では、男女の肉体的形態の違いから女性に対する
差別が肯定されてきました。
また、性的な欲望は否定されて、常に人間は動物とは
異なる理性により行動することが主張され、女性は理性を
持たない存在として抑圧されてきたのです」(中村敏子氏)

「万物の霊」という概念自体は、シナの儒教に由来する
(『書経(しょきょう)』に「人は万物の霊」と出て来る)。
しかし、福沢の思想は儒教的な“男尊女卑”の発想とは
全く隔たっている。
一方、ヨーロッパの自由主義思想を学びながら、
その「女性」観はまるで違っていた。そこに、福沢の思想的な
オリジナリティーを認めることが出来る。
と同時に、わが国における(シナやヨーロッパの女性への
差別的な捉え方とは異なる)伝統的な「女性」観が、
(恐らく本人が無自覚のうちに)反映しているとも
言えるのではないか。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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