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笹幸恵
2021.6.4 17:26メディア

意味不明のコラム「正論」―旧陸海軍の遺訓ってなんだ?

軍部を使って今の世の中を語ろうとする人、
なんだか増えてきてませんか。
今朝の産経新聞では、コラム「正論」に
東京国際大学の村井友秀特命教授が
「旧陸海軍の遺訓を忘れた日本人」と題して
寄稿している。

会員限定(無料)記事ですが、
一応リンクはコチラ。
コラム「正論」旧陸海軍の遺訓を忘れた日本人

ここでは、今は国難に直面していること、
また日本人は敗戦から多くを学んだはず、とした上で、
ミッドウェー海戦、ガダルカナル作戦、
インパール作戦の敗因を端的に紹介している。
要するに、
「二兎を追う作戦目的」(ミッドウェー海戦)
「兵力の逐次投入」(ガダルカナル作戦)
「根拠のない楽観主義」(インパール作戦)
であり、これ自体はよく言われていることなので
さほど珍しくない。
で、「日本軍は、間違いを認識しても自己否定ができず、
自己改革する勇気がなかった」と断じているのだけど、
問題はこのあと!

記事では、こう続く。
コロナウイルスとの戦いで、日本は
国内の調和を優先して国民に負担を強いることができず、
「公共の福祉」を「個人の権利」に
優先させることができなかった。
(中略)
勇気や自己犠牲といった軍事的徳といわれる道徳は、
世界中の国で必要な道徳とされている。
しかし、日本では戦後、戦争に関係のある道徳として
軍事的徳は否定され、「一人の命は地球より重い」
国になった。
(中略)
勇気と自己犠牲がない国は危機を乗り越えることが
できないだろう。

(おわり)


・・・ツッコミどころが満載すぎる!


1)現在の日本は「公共の福祉」より
「個人の権利」を優先していると本当に言えるのか。
「営業の自由」や「移動の自由」を奪う
緊急事態宣言やマンボウは何だというのか。

2)ここで言う「公共の福祉」とは何を指すのか。
まさかコロナの感染拡大防止?
「公」が間違っている場合もある。
国連からも、その曖昧さが問題だと指摘されている
「公共の福祉」を、錦の御旗のように
振りかざしていないか。

3)勇気と自己犠牲は、確かに戦時中であればこそ
生まれやすい価値と言えるが、それを単純に
コロナ騒ぎに当てはめることができるのか。
(コロナの感染を抑えるために、非正規雇用の
女性は皆、死ねってことか?
子どもにとって重要な情操教育は無視していいってことか?
それらは美しい自己犠牲と言えるのか?)

4)要するに、日本人はワガママになった、
お上にしたがえ!と言いたいのだろうが、
日本人ほどお上に依存する傾向の強い国民は
そういないのでは?

5)でもって、ここではそのお上のコロナ対策を
軍部になぞらえて批判している。
これは4)と矛盾し、支離滅裂。

結論)結局何が言いたいのかわからない。


単に戦争の知識をひけらかしただけで、
現在と結びつけるための回路は省略し、
じつに独りよがりで読み手に不親切。
国民は愚か、お上も愚か、
すべてわかっているのはオレ様だけ。
このようにしか受け取れない。


        

ちなみにガ島戦の「教訓」ですが、
昨日、トッキーがじつに神レベルのタイミングで
『軍事トリビア』をアップしてくれました。
ガ島の銃剣突撃が合理的だったのではないか、という論を
紹介しています。
「浅薄な知識人(←語義矛盾)」に惑わされないためにも、
興味のある方はぜひご覧ください!


『笹幸恵の軍事トリビア』#58
ガダルカナル島戦三度の「白兵突撃」は合理的だった!?
~『組織の不条理』から学ぶ〈1〉

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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