ゴー宣ネット道場

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笹幸恵
2021.9.9 02:01日々の出来事

玉川徹『失敗の本質』より「ウイルスの本質」を理解しなさい。

昨日のモーニングショーで玉川徹がまた
「戦力の逐次投入」を持ち出した。
いつまで経っても思考のアップデートができないようだ。

大阪府がコロナ軽症者用病床500床、
さらに中等症用病床200床を段階的に追加、
来月中に計1000床の施設を整備すると
発表したことに対して、
東京都が「酸素・医療ステーション」しか
設置、増設する予定がないことを猛烈に批判。


「なんで大阪にできることが東京でできないんでしょうね。
私は東京都民ですけど納得できない。
小池都知事は『失敗の本質』という本を愛読している
ということですけど、旧日本軍の失敗はなぜ起きたかという
分析の本で、その中に『戦力の逐次投入』という項目がある。
まさに今がそれをやっている状況」

「酸素ステーションに点滴(抗体カクテル療法)も
できるようにすると、抜本的な対策を打っていない。
まさにこれが戦力の逐次投入。
都医師会の会長が人員はなんとかするといっているのに
なぜ味の素スタジアムなどを使って大阪のような大規模の
中等症用の施設をいまだに作らないのか、
まったく理解できない」

このコメントを見てもわかるように、
いまだにコロナを殲滅すべき”敵”だと思っている。
度しがたいほどのコロナ脳。

というか、そもそも入院施設の建設がなぜ「戦力」なのか
全く意味がわからない。
入院施設はどちらかといえば兵站に該当するだろう。
それに、大規模な入院施設を作るより前に、
補助金もらってコロナ患者を受け入れない病院を
何とかすることのほうが先だ。
もうコロナの本質はわかってきているのだから、
指定感染症を2類から5類に下げるよう
検討するほうが先だ。


『失敗の本質』に書かれているのは、
戦力の逐次投入だけではない。
こんな一文もある。

「日本軍の戦略志向は短期的性格が強かった。
日米戦自体、緒戦において勝利し、南方の資源地帯を
確保して長期戦に持ち込めば、米国は戦意を喪失し、
その結果として講和が獲得できるというような路線を
漠然と考えていたのである。
連合艦隊の訓練でもその最終目標は、太平洋を渡洋してくる
敵の艦隊に対して、決戦を挑み一挙に勝敗を決すると
いうのが唯一のシナリオであった。
しかし、決戦に勝利したとしてそれで戦争が終結するのか、
また万一にも負けた場合はどうなるのかは真面目に
検討されたわけではなかった」

要するに、陸軍がやった「戦力の逐次投入」も失敗、
一方で海軍が志向した「短期決戦」も失敗したのだ。
馬鹿の一つ覚えのように「逐次投入ダメ」と言うけれど、
決戦を志向したって失敗する。
日本軍の失敗は、もっと多面的で、もっと複雑だ。
それを理解しないうちは、何を言っても的外れ。

コロナはこれからも変異株が出てくるだろう。
ワクチンは出口戦略にはなり得ない。
とすると、上手に付き合っていくしかないのだ。
玉川徹は『失敗の本質』を持ち出す前に、
物事の本質、ウイルスの本質を理解しなさい。

もう一つ、『失敗の本質』から、玉川徹に
この一文を送りたい。

「日本軍の戦略策定は一定の原理や論理に基づくと
いうよりは、多分に情緒や空気が支配する傾向が
なきにしもあらずであった。これはおそらく科学的思考が、
組織の思考のクセとして共有されるまでには至って
いなかったことと関係があるだろう。
たとえ一見科学的思考らしきものがあっても、
それは「科学的」という名の「神話的思考」から
脱しえていない(山本七平『一九九〇年の日本』)のである」

今の日本は、果たして本当に科学的思考が
クセとして共有されているだろうか。
私たちは、その意味において「日本軍の失敗」を
続けているのではないか?
一体あの敗北から何を学んだんだ?

ついでに記す。
私が所蔵する『失敗の本質』(第61刷/2008年)には、
玉川の言う「戦略の逐次投入という項目」は
見つけられなかった。
本文にはあるが、小見出しなどの「項目」として
あげられているわけではない。
言葉のあやですかね。
笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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