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笹幸恵
2022.1.20 19:15皇統問題

『SPA!』倉山満の妄言が凄まじい。

『SPA!』1/25号で、倉山満がまた皇位継承問題について
支離滅裂なことを言っている。

まず、有識者会議が提出した報告書について、こう述べている。

世の中には「何が何でも秋篠宮家から皇位を
取り上げたい」という変わり者もいようが、
そのような人たち以外には誰もが納得できる案だ。

何を言っているのか。
秋篠宮家から皇位を取り上げるとか、そんな話ではない。
あの報告書は、普通の国語力で読めば、
誰もが特例法の附帯決議の目的に沿っていない、
論点がずれている、と思うはずだ。
普通の国語力があれば、の話だが。
倉山満は、竹内久美子と同様、
二項対立の単純思考で凝り固まっているとしか思えない。

そして、いつもそうだが「先例原理主義」で
とにかく先例に基づけ、と記す。
ならば古代の双系継承こそ先例としなければならないのに、
なぜかこう書く。

神武天皇の伝説以来
一度も例外なく継承されてきた先例が、
皇位の男系継承である。

伝説なのに「一度も例外なく」などとなぜ言い切れる?
欠史八代はどう説明する?
伝説と事実を混同して、それを現代に強制するなど、
時代錯誤を飛び越えて荒唐無稽ですらある。

さらに、ここから倉山自身も混乱しているのか、
文章がおかしい。

(皇位継承問題を語る大前提として)
第四に、日本国憲法でも可能な方策でなければならない。
(中略)
皇室の長い歴史は、日本国憲法とも調和が可能である。
だから、日本国憲法に合わせて、皇室の歴史を捻じ曲げるのは、
本末転倒だ。世の中には、「ジェンダー平等だから女系天皇」
などと言い出す向きもある。

日本国憲法でも可能な方策を、と言っているのだから、
それに合わせることに賛成しているのかと思いきや、
本末転倒だと切り捨てている。
接続詞の使い方が間違っているんじゃないか。

多分、倉山はこう言いたいのだろう。
「皇室の長い歴史は日本国憲法とも調和が取れているのだから、
今さら現代の価値観に合わせて歴史を捻じ曲げるなどあり得ない」

全く同意できないが、この段落自体、理解するのに15分もかかる悪文。

もう一つ、日本国憲法の話をしているのに、
なぜ「ジェンダー平等」が出てくるのかもわからない。
憲法にからめるなら、「性別による差別」だと思うけど。

これについては、こう反論を続けている。
(ジェンダー平等)を言うなら、
民間人の女性は誰でも皇族になる資格がある。
(中略)
一方で、民間人の男が皇族になった例は、一度もない。
果たして、これを男女差別で測れるのか?
次元が違うとしか言いようがない。

竹田恒泰と同じ主張である。
こんな屁理屈、まともに取り合う人がいたのか。

これについては後述、とりあえず先を続けよう。
倉山は、有識者が報告書で提案した2案の
”真意”について、「こういうことだ」と解説している。

敬宮愛子内親王殿下には、女性宮家を創設、
結婚後も皇室に残っていただく。
そこに、旧皇族の男系男子孫の方がご結婚、
婿入りしていただく。その折には親王宣下により、
「陛下の息子」として婿入りしていただく。
旧皇族の方に愛子殿下が嫁入りしても同じことだが、
今の直系に誰よりも近い愛子殿下に、
最近になって親王宣下された方が婿入りする方が
自然だろう。

ほとんど正気とは思えない主張だ。

「陛下の息子」とは、上皇陛下か天皇陛下の
養子になる、ということだろう。
仮にその養子案を認めたとして、
上皇陛下の息子となれば、
愛子さまは叔父と結婚するのか。
天皇陛下の息子となれば、
愛子さまは兄弟と結婚するのか。
そもそも愛子さまは、好きな人と結婚する自由すら
奪われるのか。
皇室を設計主義的かつ人為的に操作しようとする、
この発想そのものが気持ち悪いし、嫌悪感を覚える。

そして後段は、「女性は皇族になれるが男性は皇族になれない」
という先ほど紹介した屁理屈を、自ら否定しているに等しい。
男が「今の直系に誰よりも近い愛子殿下」に婿入りしたほうがいい
ということは、倉山自身も愛子さまのほうに正当性があると
認めているからではないか。
男女差別のモノサシは、皇族になれるとかなれないとかの話ではない。
「今の直系に誰よりも近い愛子殿下」が、
そうであるにもかかわらず、天皇になれないことが
おかしいのではないか、と言っているのですよ。
ただ「女」というだけで。

そもそも、民間人の男が結婚しても皇族になれないのは、
これまた女性皇族のみ、結婚したら皇籍を離れる、
という決まりになっているからじゃないの。
バカも休み休み言え。

もう一つ矛盾がある。
「民間人の男が皇族になった例は、一度もない」
と書いておきながら、報告書にある養子案を認めている。
旧皇族の男系男子孫は、生まれたときから民間人だ。
養子案というのは、民間人が皇族になる案だ。
先例に基づかなければならないのなら、
こんな養子案など、噴飯モノだと切り捨てなければ
辻褄が合わない。

結局のところ倉山は、男系の「血」すら
つながっていれば、あとは何をやってもいいと思っている。
これこそ本当の不敬と言わずして、何と言う。

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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