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高森明勅
2022.8.19 08:00皇統問題

皇位継承「長子優先」ルールに対する皇室ご自身のお考えは?

皇位継承の在り方について、男系限定か女系容認かの
態度を明らかにせず、しきりに皇室ご自身のお考えを
最優先すべきだと言いながら、肝心な皇室のお考えを
謙虚かつ懸命に拝そうとする姿勢がまるで見えない人が、
時折いる。


要は、国民としての責任を回避して、

ひたすら問題解決の“先延ばし”を図っているだけ
(又は本音としては無関心)。


皇室の方々は、憲法第1条及び第4条第1項の規定によって、

皇位継承の在り方について、制度的な部分に直接、
言及することは制限されている。
このことは、天皇陛下や上皇陛下がこれまで、
記者会見でこの点に関わる質問が出されるたびに、
直接の回答を控えて来られた事実によく示されている。


皇位継承の“当事者”であられる方々のご発言を封じるのは、

改めて言うまでもなく非人道的かつ理不尽この上ない
仕組みであるが(私自身は過去にこの点への問題提起を
何度も繰り返している)、国民も政府・国会もそれを放置して来た以上、
さしあたりその制約を踏まえて、わずかな手がかりから
皇室のお考えを拝察する以外に方法はない。


皇室ご自身のお考えを拝する上で、平成24年春から同31年にかけて、

月1回程度というハイペースで、天皇陛下と上皇陛下と
秋篠宮殿下のお3方が、皇室の課題などについて話し合いを
重ねて来られた事実が、重要だ(最後の三者会談は平成31年4月24日)。


そのメインテーマが皇位継承の在り方であったことは、

たやすく想像できる。
従って、少なくともこのテーマを巡っては、
お3方の間に既に合意が出来ていると考えるのが、自然だろう。
それを前提にすると色々と見えてくるものがある。


①秋篠宮殿下が、令和の時代を迎えても、

次の天皇になられることが確定した地位を示す「皇太子(皇太弟)」
という称号を辞退され、「秋篠宮」という“傍系”であることを
表示する宮号(みやごう)をそのまま維持されたこと。


②秋篠宮殿下が将来、即位を辞退されるとのご意向が

メディアで報じられ(「朝日新聞」平成31年4月21日付)、
宮内庁もそれを訂正しなかったこと(即位辞退は制度上は可能。
皇室典範第3条。園部逸夫氏『皇室法概論』参照)。 


③秋篠宮家として、皇位継承の在り方は「長子優先」が

望ましいと考えておられるらしいこと
(長子優先ならば、男女の性別に関係なく天皇の第1子〔長子〕が
優先されるので、敬宮〔としのみや、愛子内親王〕殿下が
秋篠宮殿下より優先され、次は「愛子天皇」という結論になる)。


④上皇陛下は将来、敬宮殿下が即位されることを

望んでおられるとの証言が既に紹介されている
(奥野修司氏『天皇の憂鬱』)。


①~④は全て整合する。


お3方の間で、どのような合意に達しておられるかは、

ほぼ明らかだろう。
敬宮殿下が、ご成年を迎えられた際の記者会見
(令和4年3月17日)で、関連質問へのお答えとして
「これからも長く(両陛下と)一緒に…」とおっしゃられたことも、
そうした文脈の中で理解すべきだ。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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