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笹幸恵
2022.9.26 10:24皇統問題

皇統問題に関する有識者会議報告書読み比べ〈2〉

平成17年と令和3年の皇統問題に関する
有識者会議報告書の読み比べ、その2。

皇統問題に関する有識者会議報告書読み比べ〈1〉
でも書いたけれど、
平成17年報告書には、本論冒頭に
「Ⅰ.問題の所在」が明記されている。
すなわち、
「安定的な皇位の継承は国家の基本に関わる事項」
であり、現行典範ではそれが不確実になりかねない
ということだ。
要するに問題となっているのはココですよ、と
ちゃんと明らかにしている。

次に「Ⅱ.基本的な視点」として、
この問題を議論するのにどのような視点を持つか、
についても記している。
象徴天皇の意義を確認した上で、
「象徴天皇の制度は、我が国の歴史と深い関わりを持ち、
国民の支持の上に成立するものである」ことから、
「これにふさわしい制度」について、
3つの基本的な視点で総合的な考察を行うという。

〔3つの基本的な視点〕
①国民の理解と支持を得られるものであること
②伝統を踏まえたものであること
③制度として安定したものであること。

なお、②の「伝統」については、この会議の
見解が述べられている。

伝統の内容は様々であり、皇位継承についても古来の様々な伝統が認め
られるほか、戦後の象徴天皇の制度の中で形成されてきた皇室の伝統もあ
る。さらに、例外の有無、規範性の強弱など、伝統の性格も多様であると
考えられる。
また、伝統とは、必ずしも不変のものではなく、各時代において選択さ
れたものが伝統として残り、またそのような選択の積み重ねにより新たな
伝統が生まれるという面がある。
このため、社会の変化や現在の状況に照らして、皇位継承制度に関する
様々な伝統の中で、何をどのような形で次の時代に引き継ぐのか、という
視点が重要である。 言葉が恣意的に使われたり、あるいは一人歩きしたり するのを防ぐための、非常に慎重かつ丁寧な姿勢というべきだろう。 この点からも、知的誠実さがうかがえる。 一方の令和3年報告書。 こちらは「1.はじめに」のあと、 「2.現行の皇位継承・皇室制度の基本」として、 皇室典範が男系男子の継承を定めていること、 男系・女系の定義、 さらに歴代皇位が例外なく男系で継承されてきたこと、 その他の皇室典範の内容(非嫡出子は皇族としない、 皇族は養子をすることができない、など)が ごく簡単に記されている。 そろそろ平成17年報告書と同様、 どこに問題が所在するのか(問題意識の共有)、 どのような姿勢で議論するのか(基本的な姿勢)を 明らかにしてもらいたいところなのだけど、 それがないまま「3.議論の経緯」へと移る。 そこでは、ひたすら「何をやったか」が記されている。 ヒアリング項目の作成、ヒアリングを実施、 それを踏まえて議論・・・といった具合。 平成17年報告書は、いつでも立ち返るべき原点として 基本的な視点を挙げているのに対し、 令和3年報告書は皇室典範の基本事項を 表面的になぞっただけで、 あとは「あれやりました」「これやりました」 という実施報告なのだ。 小学生の夏休みの絵日記じゃあるまいし。 結局のところ、有識者がどのような課題に どう向き合おうとしているのかが不明なまま。 これが本当に「有識者」の会議なの? ついでに言う。 令和3年報告書の文面があまりにひどい。 女系の定義についてはこう書く。 「女系」とは、「男系」以外の天皇との血のつながり すなわち母方を通じてしか天皇とつながらない血のつながり 含んだ血統のつながりのことをいいます。 (傍線:笹) ヒアリング対象者に言及した箇所ではこう書く。 ヒアリングの対象者を決めるに当たっては、幅広い お考えをお聞きすることができるよう、歴史や法律、 皇室制度や宗教などに詳しい専門家の方々から ご意見をお聞きすることはもちろん、若い世代の方々等も含め 広くお考えをお聞きすることができるよう 留意しました。 (傍線:笹) 重複感が半端ない。 誰も朱字を入れなかったのだろうか。 どちらも、語彙力と表現力の乏しさが浮き彫りになっている。 それ以前に、向き合う課題についての理解がないと、 文章というのは表面的なものにならざるを得ない。 自省を込めて思っていることだけど。 上記、推して知るべし。
笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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