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笹幸恵
2022.9.30 09:56皇統問題

皇室問題に関する有識者会議報告書読み比べ〈4〉

平成17年報告書と令和3年報告書の読み比べ、その4。
いよいよ本丸。

今回は、安定的な皇位継承の確保について
議論しなければならないはずの有識者会議が、
いつの間にやらそれを放棄し、
皇族数の確保を図ることに論点をずらした
令和3年報告書を見ていこう。


令和3年報告書は、
【4.皇位継承と皇族数の減少についての基本的な考え方】で、
「ヒアリングで男系継承支持が多かったから
悠仁さままでは順位を変えない」と結論づけた。
その後に続く【5.皇族数の確保について】では、
皇族の役割、皇室会議、摂政について確認したあと、
「以上のような皇族方の役割も考慮すると、
悠仁親王殿下の世代においても十分な数の皇族方に
皇室にいらっしゃっていただく必要があると考えます」
として、さっそく皇族数確保の具体的方策を記している
(報道されたのはこの部分が中心)。


ヒアリングにおいて様々な考え方をお聞きし、議論を重ねていく中
で、会議としては、以下の三つがその方策としてあるのではないかと考える
に至りました。
内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持することとすること
皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の
男子を皇族とすること
皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とすること 続けて、それぞれの方策を掲げた理由などが述べられている。 ①では、なぜか第120代仁孝天皇の皇女、 親子(ちかこ)内親王(和宮)を例に出し、 徳川第14第将軍家茂と婚姻したあとも 皇族のままだったことを紹介、 これと整合性が取れるとしている。 全く意味がわからない。 前近代では、女性皇族が皇族でない男性に嫁いでも 皇族の身分を失うことはなかった。 逆に、皇族でない女性が男性皇族に嫁いでも、 皇族の身分を得ることはなかった。 つまり、結婚によって互いの身分は変わらなかったのだ。 今は違う。 女性皇族は皇族でない男性と結婚したら皇室を離れる。 一方、男性皇族は皇族でない女性と結婚しても 皇室を離れることはない。女性のほうが皇族となる (結婚によって身分も環境もがらりと変わることを 余儀なくされるのは女であることに注意) 「結婚によって互いの身分は変わらない」という 歴史的条件があった中での婚姻の例など、 整合性どころか参考にすらならないのではないか。 もっとも驚くべきは、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を 保持する、としておきながら、 「配偶者と子は皇族という特別の身分を有せず、 一般国民としての権利・義務を保持し続けるものと することが考えられます」 と記している点だ。 これは、①の案が女系継承につながるのではないか、 という懸念の声に応えた形だ。 バカなの? 妻が皇族で、夫が国民。 夫は果たして一般国民として憲法が保障するところの 基本的人権や自由が尊重され得るのか。 現行典範下、結婚して一般国民になる眞子さまだって、 小室圭さんは婚約者としてプライバシーを暴かれ、 さんざんバッシングされたではないか。 またもし夫の基本的人権や自由が尊重されたとして、 それは皇族である妻に何ら影響がないと言えるのか。 夫が銀座のクラブで夜な夜な豪遊していたら? 夫がYouTuberになって「皇室のリアル」という 番組をライブ配信したら? 夫が「高貴な壺」を高額で売ったら? 夫が「女王様教」という新興宗教の教祖になったら? このどれもが、一般国民なら基本的には自由だ。 少しは想像力をはたらかせなさいよ。 次、②の皇統に属する男系男子を皇族とする案について。 養子は現行典範では認められていないが、 一般国民には養子縁組はよくあることだから、 皇族数が減少する中では採り得る方策である と述べている。 またこの養子案は、「直系の子、特に男子を 得なければならないというプレッシャーを 緩和することにもつながるのではないか」という。 つながらないよ。 男系継承が変わらない限り、 女は自分の努力ではどうにもならない性別の問題に 有形無形のプレッシャーを感じ続ける。 というか、そのプレッシャー緩和のために、 一般国民を皇族にするって、 人の人生なんだと思っているのか。 詭弁もいいところ。 そして、出たよ。旧宮家。 こちらは全文を紹介。 この方策については、昭和 22 年 10 月に皇籍を離脱したいわゆる旧 11 宮
家の皇族男子の子孫である男系の男子の方々に養子に入っていただくこと
も考えられます。これらの皇籍を離脱した旧 11 宮家の皇族男子は、日本国
憲法及び現行の皇室典範の下で、皇位継承資格を有していた方々であり、
の子孫の方々に養子として皇族となっていただくことも考えられるのでは
ないでしょうか。皇籍を離脱して以来、長年一般国民として過ごしてきた
方々であり、また、現在の皇室との男系の血縁が遠いことから、国民の理解
と支持を得るのは難しいという意見もあります。しかしながら、養子となっ
た後、現在の皇室の方々と共に様々な活動を担い、役割を果たしていかれる
ことによって、皇族となられたことについての国民の理解と共感が徐々に形
成されていくことも期待されます。
また、皇位継承に関しては、養子となって皇族となられた方は皇位継承資
格を持たないこととすることが考えられます。
なお、養子となられる方が婚姻していて既に子がいらっしゃる場合におい
ては、民法同様、子については養親との親族関係が生じないこととし、皇族
とならないことも考えられます。 ツッコミ① 養子になるという旧宮家の男子を連れてきなさい。 話はそれから。 ツッコミ② どこの宮家が養子を受け入れるのか、答えなさい。 話はそれから。 ツッコミ③ 日本国憲法及び現行の皇室典範の下で皇位継承資格を有し云々 とあるが、わずか5ヵ月。 その子や孫は生まれたときから「一般国民」。 ツッコミ④ 上記③の「一般国民」を皇族にするのは、 理解や支持を得るのが難しいという以前に、 憲法第14条に抵触する。 ツッコミ⑤ 養子になった人は皇位継承資格を持たないなら、 安定的な皇位継承にはならず、単なる数合わせではないか。 まあ最初から「切り離して考える」と書いているのだから つっこんでも無駄か。 ツッコミ⑥ 子がいる場合、養親との親族関係が生じない? じゃあその子はどうなっちゃうわけ?(言及なし) ツッコミ⑦ 総じて、「考えられます」「考えられます」って、 希望的観測を述べただけで終わりか? ツッコミ⑧ 養子となった人も、皇族としての活動を続けていけば 国民の理解を得られるようになるというのは、 何を根拠に言っているのか。 ツッコミ⑨ すでに多くの国民の支持を得ている愛子さまがいるのに、 それを無視するのはどういう了見か。 ツッコミ⑩ そもそも論として、そんな簡単に養子がどうのって、 あまりに安易。 繰り返しになるが、人の人生をなんだと思っているのか。 赤の他人が、その人の一生を左右する重要な決定を 何の重みもなく下そうとしている。 皇族を将棋のコマとしか思っていない。 あまりに厚顔無恥。 ちなみに③は、皇統に属する男系男子を 養子でも何でもなく直接皇族とする案だけど、 こちらはさすがに無理っぽいと結論づけている。 では、②の男系男子を前提とした旧宮家の皇族復帰について、 平成17年報告書はどう記しているか。 長くなったので、こちらは次回。 (つづく)
笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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