ゴー宣DOJO

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泉美木蘭
2022.12.31 18:01

本に愛着ありすぎる人と、ゴミにしか見えない人の戦い

きのうから父の蔵書の整理中。
「本に囲まれていると安心する」という人だったので、
学生時代に読んだらしい湿って変色して虫の食った哲学書まで
大事に残していて、家を建てた際も、いかに本の収納スペースを
最大にするかしか考えておらず、書斎の壁面はほとんど書棚になって、
母はよく「刑務所みたいに陽の差さん部屋」と言っていた。
本が焼けるし、陽当たりが良すぎる部屋はパソコンの画面が
見づらいから、仕事に適した部屋だと思うけど。

母は本や映画のDVDなどにはまったく興味がなく、
ごみにしか見えていない人なので、
落語の全集も、黒澤明の全作品集も、父が集めた
伊勢や出雲の歴史史料や民俗話集も、
「いらん」と言ってすぐ捨てようとしてしまう。
「あかん」と言っては引き取って、東京の私の自宅に避難させて
きたけど、うちもとっくに本棚から本があふれて床置きしているし、
トイレの棚まで本を置いているのでもう限界。

あんまりポンポン捨てようとするので、つい父と合体して、
「本や映画をそんな簡単に捨てたらあかん!」
と言ってしまうけど、かと言って引き取りようもないので、
すべて床に下ろして、紐でくくることになった。
一応、専門書の蔵書引き取りをしている古書店に連絡はして
いるけど、二つ返事でOKという感触でもなかったので、

どうなるかわからない。
ま、いちいち手に取ってタイトルや装丁に愛着を感じていると、

「いつか役に立つ本だろうな」と思えてどうしようもなくなるから、
母みたいに、バッサリ捨てられる人が貴重なのかも。とも思う。
 

  
高い位置にある本を、弟にすべて下ろしてもらい、
束ねはじめたけど、大量すぎてなかなか手ごわし。
柳田國男の全集があって、これはさすがに捨てられないよと
思っていたら、義妹が好きらしくて、持って帰ってくれることに
なったので良かった。
本の読める貴重な女性だ。
「堺事件」で切腹を命じられ、自分のゾウモツを突き出して
見せた土佐藩士の話をして聞かせてくれるという、
ちょっと面白い人。弟とラブラブである。

 
私は、とりあえず、古事記の解説本を1冊と、
昭和天皇崩御の際のアサヒグラフだけ持って帰ることにした。
母は「捨てたるでえ!」という気合満々。

古書店から早く連絡ほしい……。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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