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高森明勅
2023.2.6 08:00皇統問題

三笠宮、婚姻の自由を認めないのは「皇族の人格に対する侮辱」

昭和天皇の末弟でいらっしゃった三笠宮(1915年~2016年)。
皇族の「婚姻の自由」を巡り、強い主張を持っておられた
(「新憲法と皇室典範改正法案要綱(案)」
昭和21年11月3日、日本経済新聞ホームページ。
奥平康弘氏『「万世一系」の研究』にも部分的な引用がある。
以下の引用は主に後者による。

但し後者には一部、出典の表記を誤っていると
見られる箇所がある)。

「皇族だけこの(婚姻)の自由を認めないのは皇族の人格に対する侮辱である」

「(過去の皇族の婚姻は)宛〔あたか〕も
種馬か種牛を交配する様に本人同士の情愛には
全く無関心で家柄とか成績とかが無難で関係者に
批難の矢の向かない様な人を無理に押しつけたものである。
之〔これ〕が為どんなに若い純情な皇族が人知れず
血の涙を流し果〔はて〕は生死の境
〔さかい〕をさ迷ふたことであらう」

三笠宮の痛憤ぶりが伝わる当事者ご自身による切実なお訴えだ。

私としては、甚だ申し訳ない次第ながら、
ご婚姻後も皇族の身分にとどまられるケースでは、
そのご婚姻が担う公共性に照らして、“皇室会議の議を経る”
という現行の手続き
(皇室典範第10条)は当面、維持されるべきだと
考えている。

しかし皇室の方々が、そのように「婚姻の自由」が一定程度制約
されている事実に対して、
国民も当然そのお辛さに対する心配りを
求められるはずだ。

しかるに男系限定論者の中には、皇族のご婚姻をそれこそ
「種馬か種牛を交配する様に」
考えているとしか思えない言説を、
平気で吐き散らす者が
いるようだ。

国民として不敬・非礼にもほどがある。

三笠宮の意見書には以下のような、
“退位の可能性”について鋭く切り込んだ一節もあった。

「国事、国政については自己の意思を強行することも
出来ないばかりでなく、
拒否権すらない天皇に更に
『死』以外に譲位の道を
開かないことは新憲法第18条の『何人も、
いかなる奴隷的拘束も受けない』といふ精神に反しはないか?」

天皇陛下は先日(令和4年12月3日)、学習院大学・史料館で
開催された三笠宮の
ご生涯を振り返る特別展示会
(「ある皇族の100年
ー三笠宮崇仁親王とその時代ー」)に、
敬宮(としのみや、愛子内親王)殿下とご一緒に、
わざわざお出ましになった。
この事実を軽々しく見逃す訳にはいかない。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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