ゴー宣DOJO

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泉美木蘭
2023.4.14 16:04

カプセルの中より

諸般の事情により、現在カプセルの中に収納されております。
定期的にシュココーーッと空気音の鳴りひびく閉所で、
外界の音はまったく聞こえず、いま地震が起きたら、
これって一体どーなるのと若干びびっているけど、

かつてない密閉感に耳抜きをくりかえして耐えながら、
健康を回復しているところ。
もうちょっとしたらこのカプセルのまま、宇宙へ発射される
かもしれん。

実家に帰り、久しぶりに伊勢神宮に参拝してきた。
近年の伊勢神宮はつねに佃煮にするほど人がわんさかいて、
宇治橋を渡るにも躊躇するようなイメージしかなかったけど、
今回は春休みが明けたタイミングで、かなり空いていた。
タクシーの運転手さんによれば、コロナで観光バスで乗り付ける

団体参拝がいなくなっているので、この時期は静からしい。
おかげで、境内を好き好きに立ち止まりながら歩ける状態で、
初参拝の相方にドヤ顔で式年遷宮の解説をかましながら、
のんびり散歩してきた。

「式年遷宮は持統天皇の御代にはじまり、以来1300年の間…」
「皇大神宮は皇室の御祖先である天照大御神をお祀りする…」
あちこちの説明パネルに女性天皇や女神の名前があった。
内宮さん最寄りの五十鈴川駅まで電車で行ったけど、途中で
「まもなく左側の車窓に、斎宮跡が見えて参ります…」

という観光アナウンスがあった。
伊勢神宮の斎王も、もれなく女性なんよね。
「血の穢れがあり、女性天皇は祭祀ができないから男子優先」

なんて、よう言いますわな。

男野系子登場の『愛子天皇論』は、ギャグに笑いながら、
男系固執の異様さをあぶりだしているだけでなく、
小泉政権⇒安倍政権の皇統問題に関する議論停滞の流れなどが
いま一度わかりやすく描かれていて、
「女性でいいじゃん。なんで今こんなことになってるの?」
というごく一般的な感覚で興味を持って見ている人にとっても、
全体を把握できる知識が得られるところがよいなと思う。
 
さて、実家へ行くと、なんだかわけがわからないけど
とにかく母のエネルギーが有り余っていてすごかった。
「いまから車でそちらへ向かうから10分後につくよ」
と連絡してるのに、待ちきれずに道を歩いてどんどんこっちに
向かって近づいてくるから、家のかなり手前の車道から、
前のめりに歩く母の姿を発見することになった。
もはや「待てない女」のカテゴリーを通りすぎて、
「俺に後退はない、あるのは前進勝利のみ!」みたいな形態に
進化したらしい。三重のラオウかもしれん。

着いたら着いたで、いきなりアクセル全開で、
私の離婚のときのどえらい悲惨な話をつぎつぎ繰り出すから
焦った。
さらに、自分の夫は死ぬまで素晴らしい人であり、
自分がいかに幸せだったのかをぶっちぎりで語り始め、

「実は、夫からのお見合い話のほかに、もう1人Tさんという方
からの申し込みがあったんだけど、当時は私も純情すぎてね。

2人も会って比較するなんて、そんな失礼なことをしてはいけない、
私は泉さんとお見合いをするんだから、Tさんはお断りするべきよ
と言ってTさんのほうは会わずにお断りしたのよ。
そのまま最初のお見合いで夫と結婚して、40数年、死ぬまで
一緒にいたんだけどね、いま思い返すと、結果的には・・・」

と桃井かおり風の大人の気だるさを醸しながら、煙草をくゆらせ
過去をしっとり語るから、

「やっぱりあの時、夫1人に決めて本当によかったと思えるの」
と言うのかと思ったら、

「やっぱりねえ、Tさんともお見合いしといて、
比べてみても
よかったんちゃうかとたまに思うの」

と来て、一同、吉本新喜劇ばりの勢いで椅子から転げ落ちた。
母、健在。
あ、カプセルが開くようだ。

泉美木蘭

昭和52年、三重県生まれ。近畿大学文芸学部卒業後、起業するもたちまち人生袋小路。紆余曲折あって物書きに。小説『会社ごっこ』(太田出版)『オンナ部』(バジリコ)『エム女の手帖』(幻冬舎)『AiLARA「ナジャ」と「アイララ」の半世紀』(Echell-1)等。創作朗読「もくれん座」主宰『ヤマトタケル物語』『あわてんぼ!』『瓶の中の男』等。『小林よしのりライジング』にて社会時評『泉美木蘭のトンデモ見聞録』、幻冬舎Plusにて『オオカミ少女に気をつけろ!~欲望と世論とフェイクニュース』を連載中。東洋経済オンラインでも定期的に記事を執筆している。
TOKYO MX『モーニングCROSS』コメンテーター。
趣味は合気道とサルサ、ラテンDJ。

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