ゴー宣DOJO

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笹幸恵
2023.6.14 13:12日々の出来事

LGBT法案にまつわるゴチャゴチャな状況。

いわゆるLGBT法案が昨日、衆院を通過した。
が、右からも左からも反対の声が上がっている。
少し整理してみたい。

まず左巻きの人々について。
本法案はLGBTQなど性的少数者への理解増進を目的とした議員立法。
反対する理由などないのでは?
と思っていたら、そうではなかった。

LGBT法連合会(性的指向および性自認等により困難を抱えている
当事者等に対する法整備のための全国連合会)によると、
もともとは「差別禁止法」を求めていて、
それが「理解増進」に変わった。
百歩譲ってそれはいい。
しかし、議員立法として与野党が協議する中で
「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう
留意するものとする」という条文などが加わった。
これが、実質的に多数派に配慮する規定として機能するとして、
当事者の差別や困難をなくす取り組み自体を「規制」する動きだと
批判しているのである。
なるほど。

この法案を成立させるために与野党が妥協し合い、
結果的に骨抜きになってしまった。
それどころか、
「LGBTの人権」に「全国民の安心」を対置させたことを、
菅野志桜里さんは「極めてリアルな危険」と
警鐘を鳴らしている。
https://www.asahi.com/comment/commentator/kanno_shiori.html?iref=commentator_detail
(ログインしないと読めないかも)

憲法の「公共の福祉に反しない限り」という一文と
同じ問題点をはらんでいるように思える。
ものすごくざっくりしていて、いかようにも解釈可能。
最大多数の幸福追求のために少数派の人権には
配慮しなくていい、という口実を与えるようなものか。

菅野さんはこの議員立法の成立過程を
「合意形成したという実績づくりが目的化」したものだと
喝破している。


一方の右派、自称保守派はどうかというと、
これまた混乱に拍車をかけている。

「心は女」だと主張する男性が女性の浴場やトイレに入って事件となるが、
「差別」を盾に免罪されかねない。(有本香)

「安倍氏は、肉体は女性だが、性自認が男性の
『トランス男性』を男性と扱うことになれば、
皇位継承者を『皇統に属する男系男子』とする皇位継承の原理が
崩れることまで憂慮した」(有本香)

もしもLGBT法案が成立したら保守政党を立ち上げる(百田尚樹)

たとえ男系継承の原則が残っても、例えば22世紀の内親王が
「トランスジェンダーの男」を宣言したら、
皇位継承可能となるのは目に見えている。(竹田恒泰)

自民党はもう終わった。今後は党としては支持しない。
新党を立ち上げるという百田尚樹さんの気持ちもよく分かる。(竹田恒泰)


政党を立ち上げるのは自由だが、
この法案で皇位継承問題を取り上げるのは
あまりに論理が飛躍しすぎていて、
バカも休み休み言え、としか言いようがない。

また、まずLGBTQへの差別が根底にあって、
LGBT法案には中味が何であってもとにかく反対、
その反対意見を”それっぽく”見せるために
極端な事例を提示し、皇統問題を懸念してみせているとしか思えない。
コメントを見ていると、それに乗っかるバカも
いるのだから驚きだ。


憲法改正問題と真逆の相似形か。
LGBT法案とにかく反対の自称保守派は、
条文を一言一句変えてはならないとするゴリゴリの護憲派に通じる。
そして今回のLGBT法案は、
憲法に自衛隊を明記した「改正案」を通したようなもの。
もし今、自衛隊明記でお茶を濁した憲法改正案が通るなら、
私もそれを批判するだろう。
「改憲したからいいよね」とはならない。
その改正は「改悪」なのだから。
一回変えちゃったら、またその機運が高まる機会はそうない、
非常に困難なのだから。
根本的・本質的な解決にはならないのだから。
そして政治家を「実績づくりが目的化している」と批判するだろう。

この理解が正しいならば、私はLGBT法案連合会が
法案に反対する声明を支持したい。
ただし、同会がもともと「差別禁止法」を求めていたことに
同意するものではない。
「差別禁止」を法律で明文化することには、
何かまた別の問題がはらんでいるような気がするので。
笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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