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大須賀淳
2023.9.24 14:34その他ニュース

録音方式の変遷「歌謡曲を通して日本を語る」余談

新番組「歌謡曲を通して日本を語る」第一回でピックアップされた3曲、

 

豊川誕「星めぐり」(1975)

 

KinKi Kids「愛のかたまり」(2001)

 

King & Prince「シンデレラガール」(2018)

 

主な意図は「昭和・平成・令和」でしたが、それぞれがリリースされた時期は「録音方式」にも大きな違いがあり、技術的な部分だけでなく、パフォーマンスや作品にも大きな影響を及ぼしています

 

「星めぐり」が制作された1970年代半ばに使われていたのは、アナログのオープンリールテープ。この時期には、既にいくつもの楽器をバラバラに録音したり、部分ごとの歌い直しなども可能ではありましたが、加工できる範囲は非常に限られているので、パフォーマンスにも高い実力が求められました

 

伝わる所では、美空ひばりなどはいつも1回の録音で完璧な歌を残していたそうです(まさにFIRST TAKE!)また、「完璧」に整えられていないからこその面白い記録となっている作品も数多いですね。

 

さて、「愛のかたまり」が制作された2001年頃に数多く使われていたのが(実は次に移行するスピードが加速した時期でもあるのですが)デジタル方式のテープ。特に、メジャー作品の大半はSONYのPCM-3348という機種で録音されています。

 

テープ方式ではあるものの、アナログの時代に比べると、何回も歌ったものの良い部分だけをつなぐような処理が格段にやりやすくなり、実際の歌唱力以上の音源が作れるように。同機は、90年代後半の「CDセールス最盛期」を支えた存在と言われます。

 

そして、21世紀になって一気に広がり現在に至るのが、コンピュータを使った(主に「ProTools」というソフトを使った)録音。現在は、これ以外の方法で録られた作品を探すのが大変なほどです。

 

コンピュータが出てくると、バリエーションの録音や切り貼りは「無限」に可能であり、さらに「音程」の調整も含め文字通り何でもできてしまいます。ブースやマイクといった物理的な部分を除けば、商業用のレコーディングスタジオも、個人のパソコン内のソフトも、機能や性能にそう大きな違いはありません。

 

こうした技術の進化に伴う質の変化には、色々な意見があるのもまた事実。しかし、道具があっても、演者はもちろんプロデュース側が多大なる才能や労力をかけないと生み出せないものがあるのは厳然たる事実です。

 

こうした時代の変遷をくぐり抜けてきた蓄積を持つ事務所をキャンセルすることは、単なる一企業を潰すだけに留まらず、他では作れないエンタメの生まれる場所を永遠に消し去ってしまう

 

機に乗じて短絡的な正義ぶりっ子を消費している人の中で、どれ位がこの事実の重さを実感しているのでしょうか。

大須賀淳

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