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2023.12.8 07:00ゴー宣道場

動的平衡は生命の本質であり保守

 

『愛子天皇論』で男野系子が「あの有名な・・・」とまで言っていた福岡伸一氏の動的平衡シリーズを読んでいます。

 

 

『新版 動的平衡3』の冒頭には、要約するとこのように書かれています。
この世のエントロピー(乱雑さ)増大の法則に抗って、秩序を維持しているのが生命体で、その営為のことを「動的平衡」と名付けたと。
「平衡」とは「物事が安定した状態を保っていること」です。
動的に平衡を取るってスゴいですよね。要するに、生命は動的なものであって(心臓も血流も常に動いている)、そうであれば生きてる限り平衡(バランス)を取っていくものだということです。
それが生き物であり、人間というもので、20ページ目には「商社も動的平衡に他ならない」とあります。
であれば、これは書かれていませんが、日本国民の集合体である国も同じでしょう。
そしてバランスを取らずにおかしなことをやってると、国というものは案外あっさり滅亡するのが人類史でもあります。
ゴー宣では「バランスを取って綱渡りしていくのが保守」「保守とはバランス感覚」とよく説明されます。この点について『大東亜論』で頭山満はこう言っていました。
「国家というものは、一つの大きな乗り合い船のようなもので、片方できれいな花が咲いていたり、景色がよかったりすると、皆そのほうに集まり、そのために船は傾き、ついには船が転覆する。
だから俺はいつも人の行かぬ舷に頑張って、船を傾けないようにしたいと思っている。」
船とは国家のことと言っているので、つまり頭山は大海を征く国家の針路を見据え、動的に判断してバランスを取っていたということでしょう。
「保守とはバランス感覚」と説明されてもピンと来てない人がわりと多い気がするのは、“何のために”バランスを取るのかを理解していないからかもしれません(「反共・反左翼が保守」と統一協会と一緒になって広めてきた保守派の堕落もありますが、やはり“何のために”が欠如しています)。
人も、人の集合体である組織も国家も、未来に進む以上は動的なので、平衡を取らないと倒れてしまうという点ですが、これはフランス革命の熱狂を叱ったエドマンド・バークの姿勢とも重なります(先週11/28の小林よしのりライジングVol.487「偏見は大事である」 https://ch.nicovideo.jp/yoshirin/blomaga/ar2175110 参照)。

 

(※ちなみにこちらの本では「偏見」は「固定観念」になっていました。)

 

『フランス革命の省察』にはこのような言葉もあります。
「不用意な発言を控えて礼節を保つことはしばしば賢明な振る舞いとなるものの、時には言うべきことを言うほうが賢明な場合もある」
「おのれの祖先を振り返ろうとしない者が、子孫のことまで考えに入れるはずがない」
「柔軟性を持ちつつ祖先につながるのは、時代遅れの迷信に執着することにあらず、「自然になぞらえて国家をつくる」という哲学を重んじることに等しい」
伝統、常識、偏見などの歴史のタテ軸の感覚を呼び起こして国家の動的平衡を取るのが大事ということが、1790年(233年前)に刊行された本に書かれており、革命に熱狂する大衆の空気に逆らってこのような真っ当なことを言った人物を「保守主義の父」と人々は呼んできました。
そしてもちろん小林先生が現在進行形で取り組まれている諸問題も同じで、いずれも国や国柄を守ろうとするものです。
左翼は国家や国境を否定するので論外ですが、左派の逆張りだけの自称保守や、皇統・皇室を守る気のない男系保守も、国家を保ち守る気がないので完全にニセモノです。

また、個体としても、動物全般で大事なのは個として自立していることですが、そのためにも「動的平衡」は必要です。
親や組織に依存し続けるなら平衡も何もありません。ニートをやるのは自由ですが、親が死んだ後にどうやって動的平衡を保つのでしょう?
親アザラシも怖がる仔アザラシを海に入れて泳がせて魚を取れるようにしますし、親チーターも狩りのやり方を仔チーターに教育します。それはもちろん親離れして自立して生きていってもらうという目的があるからです。
そういった生き方の話だけでなく、物理的にも自立するにはバランス(平衡)が取れていないと倒れてしまうので、自立独立って凄い日本語ですね。「一身独立して一国独立す」

『新版 動的平衡3』の後半では、微生物学者のパスツールの言葉「Chance favors the prepared mind.(チャンスは準備された心にのみ降り立つ)」が紹介されています。
今風に言えば「諦めたら試合終了ですよ」といったところですね。
さらにスティーブ・ジョブズの言葉「Connecting the dots.(点と点を繋げる)」も引用されています。
ニュートンやガリレオが偉大なのは観測事実を基準にした考え方を実践して広めたことで、それは今も科学の基本姿勢になっています(世の中的にはコロナ騒動でもジャニーズ問題でも全然事実の観測ができてませんが、それは置いときます)。
しかし望遠鏡が発明されたばかりの昔はともかく、現代では観測自体はほとんどされているので、あとは示されている点と点をどのように繋げるかが重要になっています。
すでにある技術を組み合わせてできたスマホなんてまさにそうですし、絶好調の任天堂のSwitchもそうです。
ガリレオがおこなった「空気抵抗を無視すれば重さが違っても落下スピードは同じの証明」も同様です。先入観をなくしてやってみれば地球上の誰でもできた実験ですが、人類で最初にやったのはガリレオでした。
諦めずに準備された心だけが、点と点を繋げることができたということになります。

これは、こちらで https://www.gosen-dojo.com/blog/43461/ ゴーさんが言っていた
>読み終わったときから、日々生起する時事問題について、保守的感覚で思想してみたくなっちゃいますよ(自分にもできそうって!)。
とも同じです。公論イベントの議論でも、「こことここの話が繋がるのか」と思ったことはありませんか?「天皇論のあの話はこういうことか!」とか。

ここまで来れば皆さんの頭にも浮かんでいると思いますが、【 #愛子さまを皇太子に 】もそうで、もう答えは出ており、あとは諦めずに準備する心で点と点を繋げ、皇統の存続という線にできるかどうかになっています(だからこそ「愛子天皇という結論は出てるからもういいや」で終わった気になるのは良くないのです。それはまだ点であって、繋げて線にする仕事は成されていないので)。

逆に、国家、公(おおやけ)の未来を見据えずに男系に固執するというのは、私的で自分勝手な行為でしかありません。
「男系は側室なしでは不可能だから固執するのを止める=双系に道をひらく」皇位継承問題においてはこれが動的平衡を取る行為であって、それを妨害する者は保守ではないどころか、国に害をなす者であり、国賊ということなのです。
35億年の生命の摂理としても、500万年のホモ・サピエンスの歴史としても、動的に平衡を取らないと滅ぶのですから、皇室ひいては国家の転覆を回避しようとバランスを取ろうとすることが「保ち守る」保守であり、尊皇であり、愛国者であり、生命のあるべき姿でもあります。
日本の長い歴史というのはそうやってここまで続いてきたに違いありません。田中卓氏の『愛子さまが将来の天皇陛下ではいけませんか 女性皇太子の誕生』でも、「天皇制度」を日本丸という船にたとえて、「船長以下乗員・乗客すべてが一致協力(一君万民・君民一体)して日本丸を二千年間航行させてきたのが、日本の歴史なのである。」とあります。
日本国と皇室は自動的にこうなったわけでも、これから何もしなくても永遠にあるわけでもありません。そう思い込むのは国家に無責任な戦後民主主義サヨクの感覚です。

ということで、今回は自分なりの準備された心を持って、「動的平衡」という生命の本質と、「保守」という思想・哲学の点と点を繋げてみました。

 


 

 

【トッキーコメント】
「動的平衡」から保守思想までを繋げる、ケロ坊さんの力作でした!
自称保守は今あるものを1ミリも変えないことが「保守」だと思い込んでいますが、それは保守でも何でもなく、ただ思考を放棄しているだけであり、その態度は保守どころか「自滅」への道を歩むものでしかないことは明白です。

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