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大須賀淳
2025.6.15 20:06

玉木雄一郎「〝堕縁〟の哲学」

玉木雄一郎は、2005年の衆院選初出馬で落選後、同郷で〝縁戚関係〟にあるという大平正芳元首相(1910-1980)の親族に支援をあおぎ、2009年の衆院選で初当選を果たしたとの事。

 

こちらの記事によると、玉木と大平元首相の関係は「父の姉の夫の弟の妻が、大平元首相の次男の妻の妹」という、ちょっと興信所を使っても判明するか怪しい程に遠いものですが、それだけ遠縁(と呼べるかも怪しい)に「親戚でーす。協力して!」と行けちゃう感覚が、ある意味で玉木最大の「政治家としての武器」なのでしょう。

 

そして、その「利用できるものは何でも利用する」性質自体は、軸となる確かな(「公」の方を向いた)志さえあれば、有効にはたらく局面もあるとは思います。

 

「公」の方を向いた志さえあれば、です。

 

さて、上記の経緯もあり、玉木は大平元首相を尊敬する人物として挙げ、墓参の際にもメッチャ映え映えな写真をとってはせっせとSNSに投稿しています。

 

そして、上記の投稿でも触れている、大平元首相の「楕円の哲学」を、国会での質問などでも引用しています。

 

この「楕円の哲学」とはどのようなものか?こちらのサイトからの孫引きになってしまいますが、服部龍二「増補版大平正芳 理念と外交」33ページには、横浜税務署長に赴任した際の大平の言葉として


行政には楕円形のように二つの中心があって、その二つの中心が均衡を保ちつつ緊張した関係にある場合に、その行政は立派な行政と言える。

例えばその当時支那事変の勃発とともにすべり出した統制経済も統制が一つの中心、他の中心は自由というもので、統制と自由とが緊張した均衡関係にある場合に、はじめて統制経済はうまくいくのであって、その何(いず)れに傾いてもいけない。


と記述されています。

 

原典にあたらないままの突っ込んだ解釈は控えますが、少なくとも上記の内容からは、保守としてのバランス感覚における基本的な観念について触れたものであろうと、私には感じられました。

 

その時点で既に、玉木の言葉や振る舞いには、大きな違和感しか湧いてきません。

 

玉木は「楕円の哲学」を、ただの「八方美人処世術」みたいなニュアンスで捉えているんじゃなかろか?

 

秩序を保つための「統制」にも、個人の「自由」を貫くにも、必ず軋轢が生じ、「敵」はできてしまう。これは相対的に見れば、向こうにとって自分は「悪人」なわけで、中島みゆきの歌じゃないけど「僕は悪にでもなる」ぐらいの覚悟がないと、公という楕円を均衡させるために言葉を発する事なんかできません。

 

玉木ポストの「敵をつくり相手を貶めることで自分の評価を上げる政治手法」という言葉は、根本が「政治=プロパガンダ合戦」という価値観に基づいており、まるで「企業向けSNS対応マニュアル」の「炎上させないためには」という項目でも読み上げているかのように薄っぺらです。

 

玉木雄一郎に、自身が「悪」と見られようと他の人(そしてその向こうにある「公」)を守ろうとする精神性、カケラでもある?

 

上記を強く思ったのが、山尾志桜里氏への公認取り消しを発表した翌日の玉木の談話。


本当に優れた能力をお持ちの方であり、これまで我が党にもご貢献いただいた。コミュニケーションを取って、また何らかの力を貸していただきたい。


 

「本当に優れた能力をお持ちの方」と思うのだったら、玉木は一度でも、八つ墓村的世間を敵に回してでもの覚悟でそれを熱弁した事があったでしょうか?

 

山尾氏は声明文で「今後は一線を画させて頂ければと思っております」と明確に決別を宣言していますが、上記引用はその言葉を受けてなお、のモノ。

 

玉木雄一郎は、「山尾志桜里を〝敵〟にする」という覚悟さえなく、「公認取り消し」してるんです。

 

これ絶対に「楕円の哲学」じゃない。

 

色々と理知的っぽく見える表現も考えたんですが…私は根が下世話な人間なもので、どうしても「男女の修羅場」でこんな感じの事言ってるキモい野郎と同じとしか感じられませんでした↓

 

「まー今回は色々ヤバい事になっちゃって…ここはお互いのためにも別れるしかないよねー。あっ、LINEブロックしないで!…これからもさー、なんかちょっとムラムラっとしちゃう時とかあったら、後くされ無しでホテルとか行こうよー」

 

玉木雄一郎の中にあるのは楕円じゃなく「〝堕縁〟の哲学」。

 

政治の世界において、最大限に機能不全を招いている「悪しき〝なあなあ〟」の精神性そのものだよ。

大須賀淳

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