産経新聞9月4日付けの「正論」欄に憲法学者の
百地章氏が「愛子天皇」待望論への批判を
展開しておられる。その際、唯一、拙著の書名を
わざわざ掲げて戴いたのは、光栄だ。「『愛子天皇』支持者の中には…天皇という地位は
『国民の総意』に基づくべきであり、
世論調査では9割が『女性天皇』を認めている。
この国民の気持ちを無視してよいのか
(高森明勅『愛子さま 女性天皇への道』)
との見解がある」
(百地氏「世襲の天皇と『日本国民の総意』」)しかし、次代の天皇として敬宮殿下の
ご即位を願う立場が、専ら世論調査の結果だけを
根拠にしているかのような論調には、
いささか首をかしげる。私がこれまで繰り返し強調してきたのは、
「人物論」ではなく、「ルール論」だということだ。
お名前を挙げて畏れ多いが、次の天皇は
「敬宮殿下か、悠仁親王殿下か」
国民はどちらを選ぶのか、といった不敬な議論ではない。そうではなくて、目の前の皇室の危機を打開する為には、
皇室典範が抱える“構造的な欠陥”を解消し、
安定的な皇位継承を目指すルールの是正を
行うことが欠かせない。
そのルールの是正ができれば、
結果として次の天皇は敬宮殿下になる、
という順序だ。そこをすり替えて貰っては困る。
拙著には、「愛子さまが天皇になるべき理由」
として以下の5つを掲げておいた。
念の為に、そのポイントを再掲しよう。①「側室不在の『一夫一婦制』で、
しかも“少子化”を食い止めることができない状況なのに、
明治の皇室典範で初めて採用された
『男系男子』限定という歴史上最も窮屈な縛りに、
いつまでもしがみつくことはほとんど
自殺行為と言わなければなりません。だから皇室の存続を願うのであれば、
そのような無理で無茶なルールを変更して、
女性天皇、女系天皇を可能にする以外に、
方法はないのです」※もし私見を批判されるのであれば、
順序としては第1の理由として掲げた
この点から、先ず批判して欲しかった。②「国民は男女によって構成されます。
当たり前ながら国民の約半数は女性です。
にもかかわらず、その半数を女性が占める
国民の統合の象徴に“男性しかなれない”
というルールは、いびつではありませんか。…あらかじめ女性だけが、
ただ『女性だから』というだけの理由で排除される…
というルールは、やがてそのルールを前提とした
象徴という地位そのものの正当性
(理にかなって正しい)にも、
疑問を生じさせるのではないでしょうか。そもそも男性天皇ならば国民統合の
象徴になりえても、女性天皇では
国民統合の象徴になりえないという、
客観的な根拠があるのでしょうか」③「天皇の後継者はやはり天皇との血縁が最も近く、
おそばで長年にわたり感化·薫陶を
受けてきた方がふさわしい、ということです。
世襲の核心は、単なる血筋の継承ではなく、
“精神の受け継ぎ”です」④「天皇という地位は『国民の総意』に基づくべきだ、
ということです。
もちろん、政治家のように人気投票によって
左右される軽い立場ではありません。
…そのような人気の移ろいははかないものです。
天皇という重い立場はそれらとは
区別しなければなりません。しかし、国民の気持ちをまるで
無視してよいかといえば、それも違います。
皇室自体も、これまでの各種世論調査で長年にわたり、
高い支持を集めてきました。
瞬間最大風速的な支持とは明らかに異なります。
女性天皇についても同様です。長年にわたり
コンスタントに7割、8割、9割といった
高い支持が集まっています…。
これをまったく無視ししてよいかといえば、
そうではないでしょう。…いつまでも男尊女卑的な感覚にとらわれて、
思考停止を続けているひと握りの人々への
過剰な配慮から、圧倒的多数の国民の願いに
背を向け続けていては、皇室を支える
国民的な基盤を危うくする結果になりかねないでしょう」※これを批判するのであれば、
国民の気持ちは「まったく無視してよい」
という立場であることを意味する。⑤「さきに秋篠宮家が『ジェンダー平等』という
価値観を大切にしておられる事実を紹介しました…。
このジェンダー平等は、まさに現代における
普遍的な価値観ではないでしょうか。…天皇、皇室への“別枠扱い”について、
憲法学者の佐藤幸治氏は次のように限界づけています。
《それが世襲の象徴天皇制を維持するうえで
最小限必要なもの(に限る)》
(『日本国憲法論』)と。ところが、皇位継承資格を男系男子に限定するという
ルールは、これまで述べてきたように、逆に憲法が設けた
『世襲制』を至難にしてしまいます。
さらに、先にも述べたように『象徴制』とも
齟齬するおそれがあります。そうであれば当然、ジェンダー平等という
普遍的な価値観が優先されるべきでしょう」皇位継承問題の解決を進める為であれば、
批判や反論は勿論、歓迎する。
しかしその場合、当方の論旨を正しく踏まえて戴くことが前提だ。▼高森明勅公式サイト
https://www.a-takamori.com/
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