ゴー宣DOJO

BLOGブログ
高森明勅
2025.10.12 13:19皇室・皇統問題

世襲の原則、皇太子と傍系の皇嗣の違いを巡る法制局の見解

直系の皇嗣=皇太子·皇太孫と傍系の皇嗣の違いについては、
これまでもしばしば指摘してきた。

例えば、摂政に当たる順位が優先する皇族が、
未成年とか心身の重患、重大な事故などの事情の為に、
他の皇族が摂政に就任していた場合、その事情が解消されても、
皇太子·皇太孫を除き、摂政は交代しない(皇室典範第19条)。

傍系の皇嗣でも、一般の皇族と同じく交代しない。
摂政は天皇の国事行為を全面的、継続的に代行する
極めて重い立場だ。
その点を考慮すると、この違いが大きな意味を持つ。
何故このような違いを設けたのか。

皇室典範を制定する際の法制局(内閣法制局の前身)の説明がある
(「皇室典範案に関する想定問答」)。
「皇位継承は皇太子又は皇太孫においてなされることが
世襲の原則であるべきで、その意味で皇太子又は皇太孫は
他の皇族とは異なる地位にある。
…他の皇族の皇位継承或は摂政の順序については、
その間で比較的近親者を優先させるに過ぎないのであつて…
かかる皇族間の順位の前後は左程(さほど)重要な問題でない。
これが皇太子及び皇太孫以外の皇嗣につき特例を認めなかつた理由である」

これは注目すべき指摘だろう。

先ず、皇位の“世襲”継承は親→子→孫という直系継承こそが
本来の「原則」であること(皇太孫は皇太子が不在の時の皇嗣たる皇孫。
皇室典範第8条)。

次に、傍系の皇嗣の場合は「比較的近親者を優先させるに過ぎない」
「順位の前後は左程重要な問題でない」とされていること。
これらを踏まえると、現在の秋篠宮殿下→悠仁親王殿下の
皇位継承順序を固定化すべき確たる理由はないと言える。

そもそも秋篠宮殿下ご自身が、即位するおつもりはないとの
ご意思を示しておられるし、不測の事態を除けば年齢的にも、
実際に即位されることは想定しにくい。
普通に考えると、直系の皇太子たるべき敬宮殿下が、
「女性だから」というだけの理由でその地位を与えられていない
現状の方がむしろ異常、との結論に達するはずだ。

▼追記
プレジデントオンラインの連載「高森明勅の皇室ウォッチ」
9月10日公開記事が関心を集め、9月BEST記事として10月11日より再掲載。

https://president.jp/articles/-/102083

▼高森明勅公式サイト
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

次回の開催予定

第127回

第127回 令和8年 1/11 SUN
14:00~17:00

テーマ: ゴー宣DOJO「新春 女はつらいよ」

INFORMATIONお知らせ