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大須賀淳
2025.12.14 17:35よしりんバンド

横浜ライブ サウンド担当目線での楽曲振り返り

あらためて、昨日のよしりんバンド横浜ライブ「幸せな結末」にご来場、ご視聴いただいた皆様、ありがとうございました!

 

配信には乗ってないクライマックスの一コマ!

 

よしりん先生大復活!ウシハク来年への絶好のスタートとなった今回のライブですが、さらに余韻を楽しんで頂くオマケとして、完全にサウンド担当者の目線から、本編のトークとは違った角度で各楽曲を振り返ってみます。

 

1.幸せな結末

元曲は1997年発売の大滝詠一の楽曲ですが、今回は鈴木雅之&松たか子がカバーしたバージョンを元にしています。大滝詠一の楽曲は、例えるなら「壁画」のように広がりのあるサウンドが特徴的ですが、鈴木&松バージョンはデュエット化と併せて、服部隆之氏による、柔らかな色彩を感じるようなアレンジが施されています。

 

とはいえ、カバーバージョンの方にも大滝ワールドに欠かせない「記号」のようなものがしっかり踏襲されており、今回のライブでもそのポイントを外さないように留意しました。

 

大滝詠一の作曲で鈴木雅之が歌った曲と言えば、実は以前のライブで演奏した「Tシャツに口紅」も同じ布陣。そこから生まれる世界観は、よしりん先生のヴォーカルの「柔」の部分と相性が良いようです。

 

2.む〜んな気持ちはおセンチ

個人的に放映当時も印象的だった「おぼっちゃまくん」のエンディング曲。歌唱したMi-Ke自体が1960年代の歌謡曲やグループサウンズのサウンドをオマージュしたコンセプトですが、この曲のサウンドも完全に「ベンチャーズに端を発する〝エレキ〟の世界」です(元曲の音を聴くと、プロデューサーの織田哲郎氏は絶対にノリノリで楽しんでやってたろうなあ、としか思えません(笑))。

 

今回のライブのギターサウンドは全て「打ち込み」で作っていますが、このジャンルにも「外しちゃいけない記号」が数多く存在するので、脳内で「こんなギタリストが、こんなモデルのギターで、こんなアンプで演奏してるサウンド」というイメージを3人分ぐらい想定して(笑)曲を組み立てました。編曲・オケ作成って多分に「文脈の世界」です。

 

3.セシル

初期ゴー宣でよしりん先生がカラオケで泣きながら歌っているエピソードでもお馴染みの(笑)浅香唯の楽曲。1988年のリリースですが、サウンド的に見ると「80年代アイドルポップスの完成形」と言えます。

 

そのポイントは「キラキラ」。1980年代前半に登場したデジタルシンセサイザーによって、それまでの楽器では出せなかった煌びやかな音色が様々な楽曲で多用されるようになり、アイドルポップスのサウンドも大きく変わりました。これは松田聖子の登場〜ブレイクとも時期が重なり、そこから派生した路線の金字塔の一つとも言える楽曲だと思います。思う存分キラキラさせるのは作っていて気持ちがよかった(笑)。

 

辺見マリの「ダニエル・モナムール」(60年代)、岡崎友紀の「さよならなんて云わないで」(70年代)に続いて、チェブリンは60〜80年代のアイドルポップスを踏破しましたね。次は90年代?

 

4.恋人も濡れる街角

一転してこの曲は「1970年代テイストの到達点」と言えます。中村雅俊の歌唱によるオリジナルの発売は1982年ですが、実はこの頃から、セシルの項で述べた「キラキラ」も含まれる、派手でどこか能天気な雰囲気が一気に加速するので(それも現代日本ではオーパーツ化してしまったけど)、作者の桑田佳祐には、もしかするとその空気の変化への「風刺のような意識」もあったのかもしれません。

 

だけど、大人の男の哀愁とエロが同居する世界を描くには、いまだにこのスタイル以上のものは出てきていないと感じます。回顧ではない2020年代の感覚も反映させた上で、この味わいを踏襲したオリジナル曲をよしりんバンドでやってみたいなあ。

 

5.永遠の嘘をついてくれ

中島みゆきが吉田拓郎に贈った曲。今回のライブでは、中島みゆきがライブでセルフカバーしたバージョンをベースに「よしりんバンドバージョン」にしています。

 

実は中島みゆきと吉田拓郎の共通項として、両者の楽曲のアレンジを多く手掛ける瀬尾一三というアレンジャーの存在があります。この人のサウンドはメッセージ性の強い楽曲世界の演出にとにかくジャストフィットするのですが、今回のオケを作っている時は「瀬尾一三がよしりん先生の歌に向けてアレンジしたら」というイメージがあり、それだけによしりん先生が「大須賀氏のオケが歌いやすい」と言ってくださったのはまさに本意成就、深い感慨がありました。

 

6.落陽

以前、スタジオからの配信で演奏したバージョンの踏襲ですが、ともしらさんのドラムが(どの曲もそうなのですが)本当にサウンド全体をボトムアップしてくれました!配信バージョンに打ち込みでドラムパートを作っている際、ちょっと(作品世界はだいぶ違うけど)イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」のような雰囲気が念頭にあったのですが、直接言葉では言ってない(はず)のに、そのイメージをさらに広げて形にしてくれています。

 

他に、サビで入るオルガンの音は「陽が沈んでいく」色彩を表現する要素なので、音色にかなり拘りました。今回では「む〜んな気持ちなおセンチ」「永遠の嘘をついてくれ」もそうでしたが、よしりんバンドでやる曲はオルガンが重要なポイントになる曲がけっこう多いかも。

 

7.酔っぱらっちゃった

この曲自体はなんとなく知っていましたが、演奏する事になって改めて聴いてびっくり!サウンド的には完全に「ファンク」です。黒人グループが演奏してても全然不思議じゃない。

 

歌詞(日本語がわかる)だけに、スナック的世界を連想してしまいますが、日本語のわからない外国人が聴いたら、黒魔術か何かの歌だと勘違いするんじゃないでしょうか(「罪作り〜」のジェスチャーとか特に(笑))。歌謡曲は、例えば「流行りでパンク」やったバンド等の数千倍も過激な世界ですね。

 

大晦日の配信の際、今年やった色々な曲についても色々な観点で話題にできれば嬉しいですが、とにかくウシハク来年に向けて大きな弾みになりました。引き続き、よしりんバンドの公演をお楽しみに!

大須賀淳

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テーマ: ゴー宣DOJO「新春 女はつらいよ」

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