ゴー宣ネット道場

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切通理作
2010.10.8 00:32

未来へ向けた言葉

   
    日曜日の道場での基調講演の内容について、プレッシャーを感じている切通です。
   ニコ動で生中継されるというのですから、コメンテーターを目指している以上、ここは売り込み時かもしれません・・・・・・などと考えるとますます緊張してしまうので、本音だけで勝負したいと思います。

   本音をどのタイミングで言うかというのは、物書きとしてよく考えます。

       僕の物書きとして最初に活字になった仕事は、ウルトラマンについての評論でした。
   ウルトラマンの物語に日米関係が暗喩されているというのは、よく指摘されることです。
     
   『ウルトラマン』(昭和41-42年放映)の最終回で、こういうセリフがあります。
  「地球の平和は人間の手で掴み取ることに価値があるのだ。ウルトラマン、いつまでも地球に居てはいかん!」

   『ウルトラセブン』(昭和42-43年放映)の最終回にも「地球は我々人類が自らの手で守りぬかなければならないのだ」というセリフがあります。

  ともに、沖縄出身のシナリオライター金城哲夫さんによって書かれたセリフです。
  金城さんはおそらく、最終回になって、いままで書いてきた物語の置かれている状況を、「いつまでもそれじゃいけないんだよ」と自己批判してみせたのです。最後まで見てくれた子どもたちに、そっと告白したともいえます。

  そしてこれらのセリフが最終回に配置されたということの理由は、言うまでもありません。
  強いウルトラマンが人間を守って外敵と戦ってくれなければ、ヒーロー番組として成立しなくなるからです。

  当時ビデオデッキも普及しておらず番組を残すことなど考えられない時代に、最終回の内容などはほとんど新聞や雑誌の記事になることはありませんでした。
 それらは、ウルトラマンを実際見てきた子どもたちの胸の奥だけに、しまわれていったのです。

 しかも、シリーズものである以上、次のウルトラマンがやってくれば、以前の最終回での目覚めは忘れられたかのように、また地球人は庇護される存在に立ち戻るしかない。

 「私は、つまるところ、日本の平和を日本人自身で作り上げていくときをいつかは求めなければならないと思っている。アメリカに依存し続ける安全保障、これから五十年、百年続けて良いとは思いません」
 
 沖縄の普天間基地問題に触れた鳩山前首相の辞任のあいさつは、もう総理をやめる人の発言だけあってマスコミで特段大きく取り上げられることはありませんでしたが、それを聞いた私は「おおッ!」と思い、すぐ小林よしのりさんに「聞きましたか」と電話をかけました。
  
  小林さんはやはりこの発言に注目していました。
  のちにゴー宣道場でこう語っています。「あの演説には、理念としては意味があった。ただ政治がなかった」。

  それでも、最後の最後とはいえ「現役」の首相が、日米関係の未来についてここまで踏み込んだ発言をしたことはかつて例を見ない出来事だったということを小林さんは認めていたし、そこには「感動した」とおっしゃっていました。

  僕も、まるでウルトラマンの最終回を見ているかのような胸のざわつきを覚えました。
  次の首相になって、その問題意識がどう受け継がれたのか見えなくなるところまで、そっくりではありませんか。

  鳩山前首相は理念を政治に活かすことは出来なかった。しかしその理念は未来に向けての言葉であり、表面的には大きく取り沙汰されることはなくても、多くの日本人の「このままじゃいけない」という潜在意識に訴えかけたのではないでしょうか。

  子どもたちにウルトラマンからの卒業を促し、沖縄に帰って郷土の文化の復興に尽力した金城哲夫さんの姿は、我々自身の明日の姿かもしれません。

切通理作

昭和39年、東京都生まれ。和光大学卒業。文化批評、エッセイを主に手がける。
『宮崎駿の<世界>』(ちくま新書)で第24回サントリー学芸賞受賞。著書に『サンタ服を着た女の子ーときめきクリスマス論』(白水社)、『失恋論』(角川学芸出版)、『山田洋次の<世界>』(ちくま新著)、『ポップカルチャー 若者の世紀』(廣済堂出版)、『特撮黙示録』(太田出版)、『ある朝、セカイは死んでいた』(文藝春秋)、『地球はウルトラマンの星』(ソニー・マガジンズ)、『お前がセカイを殺したいなら』(フィルムアート社)、『怪獣使いと少年 ウルトラマンの作家たち』(宝島社)、『本多猪四郎 無冠の巨匠』『怪獣少年の〈復讐〉~70年代怪獣ブームの光と影』(洋泉社)など。

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